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2010/03/28

Frightened Rabbit

スコットランドから、ぐっと沁みる熱い風――フライトゥンド・ラビット・インタヴュー

London@Kokoでの勇姿!

音楽を聴く指針として、友人のレコメンは大事。スコットランド出身の5人組フライトゥンド・ラビット(以下FR)も、そんな風にして知ることになったバンドのひとつだった。「泣けるから聴いてごらん!」の一言でトライしたファースト「Sing The Greys」(06年)は、ザ・クリーンを思わせる瑞々しいメロディとフック、USギター・バンドの大陸性を併せ持つ内容で、こちらの涙腺にストライク。ライヴからも飾り気のない人柄&熱さ(=いい意味でイモくさい/エモい、でもそこが好き!)が伝わってきて、スタイルやコンセプトより「歌」で勝負する実直な姿が清々しかった。Fat Catからのファースト再発を機にアメリカで一足先に話題を集めたのも、いまや貴重とすら言えるカレッジ・ロッカー的存在感が逆に光っていたからだと思う。
ザ・ナショナル、インターポール他で知られるピーター・ケイティスを共同プロデュースに迎え、音・アレンジの幅をぐっと広げたセカンド「The Midnight Organ Fight」は、こんがらがった思いや切なさを(聴いていて時に心がヒリヒリ痛くなるほど)鋭く腑分けしつつ、しかし詩情豊かに描き出す語り口とあいまって、アーティスティックなブレイクスルーを達成。誠実に、一歩一歩前に進んでいる――そんな彼らの最新フル・アルバム「The Winter Of Mixed Drinks」は、曲作りの良さに細やかなスタジオ・ワーク~アレンジを噛み合わせることで、また新たな表情を生んでみせた素晴らしい作品だ。
歌詞もアレンジも字余り気味~情熱的な表現が魅力の彼ら、ここではむしろアイデアを絞り込み、真芯を突いてくる。楽曲を無駄なく凝縮し、すっきりしたスペースに効果的に配されたキーボードやストリングス(流麗なオーケストラ・アレンジはハウシュカが担当)、コーラスが曲のムードや歌の情感を高めていて、「ギター・ロック」の一言では片付けられない豊かな音空間を造形している。とはいえスムーズな流れの中にも時折言葉がチクリ!と胸を刺してきて、FRの根本を成す痛みや悲しみが揺らいでいないのは嬉しい。痛快なパワー・ポップ「Nothing Like You」や合唱必至「Living In Colour」といった即効トラックも最高だけど、ミッド・テンポ曲のジェントルな旋律やコーラスを、気がつくといつの間にか口すざんでいたり。長く付き合えるアルバムになりそうだ。
取材に応じてくれたソングライター/ヴォーカル/ギタリストであるスコット・ハッチソン(写真右端)は、グラスゴーのアート・スクールに通っていた頃(その腕前は、FR作品のアート・ワークで確認されたし)から自作曲を歌い始め、ソロ・ユニットからバンドへ発展・・・と、元々シンガー・ソングライター体質=語り部な人。バンドならではのダイナミズムを獲得しながら、しかしFRがアコギ&歌だけでも伝わるパーソナルな息吹を今も忘れることがないのは、彼が音楽を通じて「1対1」のコミュニケーション~一過性ではない何かを信じるからだからだろう。そんな彼の、現状に対するアンチな思いを綴った曲としてファースト収録「Music Now」をあげておこう。
ファッションや今風なクールさ=パッケージしやすいバズとは無縁なせいか、これまでFRはイギリスでいまひとつ認知されず、たとえばレーベル・メイトのトワイライト・サッド、あるいはキング・クレオソートやファントム・バンド同様「スコティッシュ・カルト」としてひそかに愛されてきた感があった。くそー!ともどかしくなってしまうその状況も、この作品で変わるんじゃないかと思っている。

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――「The Winter Of Mixed Drinks」は、たぶんFR作品中これまででもっともアルバムとして統一感のあるレコードじゃないか、と。
ありがとう!
――特に歌詞がそうなんですけど、アルバムはある人間、「彼」でも「彼女」でもいいのですが、が様々な感情のフェーズ、たとえば孤独であったり疎外感、自己嫌悪といったフェーズを抜け、作品終盤、とりわけポジティヴな「Living in Colour」がそうですけど、葛藤を乗り越え心を再生させる、というストーリーがあるように思いました。作品のテーマは、どういうものになりますか?
うん、僕としては、今回はアルバム1枚を一気に書き上げよう、そういう思いがあった。曲の一部やパートのあれこれをちょっとずつ進める・・・というのではなく、大きなブロックを相手にする、みたいにね。それと、このアルバムの曲作りの過程そのものが、今言われた「再生」って話みたいなもので。本当に長く続いたきついツアーをやっと終えて、僕達はそこからすぐこのアルバムに取り掛ることにしたんだけど、まだツアーで受けた精神面・肉体面での疲労から回復しつつある、そんな状態だった。だから、それがソングライティングのプロセスそのものにも作用したんじゃないか?と。ある種の回復・再生っていう風にね。別にコンセプト・アルバムにするつもりはなかったにせよ、そうした状況は僕達のレコーディングの中にも顔を出したんだろうし・・・まあ、ひとつの物語を綴った1冊の本、みたいなアルバムにする気は特になかったけど、今回は各曲がお互いにフィットし作用する、その総体として1枚、みたいな作品にしたかったね。バラバラの曲がただ並んでいる、というのではなくて。
――その意味では、長い間にわたってあなたがソロで書き溜めてきた楽曲を1枚にまとめたファーストから、ずいぶん変化したわけですね。
うん、あれはほんと、色んな曲が混じっていて。1ヶ月に1曲・・・みたいなペースで書いたものだったんだ。でも、新作とセカンドの曲については1ヵ月半くらいの間で全部書いたし、それがサウンドにも現れてるんじゃないかな。曲を書いていた一定の期間に、僕、あるいは僕達が興味を持っていた音が、レコード全体を通して聞こえてくる、っていう。
――また、今回は曲作りのため一時的に田舎に引っ込んで、いわば隔離された環境でソングライティングに取り組んだ、とも聞きましたが?
ああ、うん・・・かなり人里離れた環境にいたな。自分ひとりきりだったし、滞在していたのはスコットランドの東岸にある、とても小さな村で。その目的のひとつは、確かにソングライティングに専念しよう、集中しようってものだったけど、友達があそこに家を持ってて、「タダでいい、いつでも好きな時に使いなよ」って言われたってのもあって・・・だから、そうした(今作向けソングライティングの)プロセスすべて・・・ひとりで過ごすこと、普段の生活から離れて自分だけになる、そうやって色んな意味でヘルシーになろうとするっていう面が、レコードの中にも自ずと出てきたんじゃないかな。都会から隠れたい、離れたいって思いはあったし、うん、今回は都市の環境の中で曲を書きたくはなかったし。だから、それを逃避って呼んでくれてもいいのかもしれない。
――なんで、そうやっていったん頭をクリアにする必要があったんでしょう?ツアーから来た疲れや心労があって、何もかもから逃げ出して新しく始めたい、みたいな思い?
うんうん、何もかも・・・っていうか、悪気はないけども、正直言ってバンドのメンバーからも逃げ出したかったくらいだからね。
――(笑)マジですか。
えっ、でもそりゃ当然だよ~!っていうのも、(バンドをやっていることで)ひとつ言えるのは、他のメンバー達と、もう長すぎだってくらい一緒に過ごさなきゃならない点で・・・そうなると、たまには自分ひとりにならなくちゃいけないんだよ。だから、それらのすべてから脱出しなくちゃいけなかった、みたいな・・・うん、僕にしてみれば、そこがツアーに出ると身動きできないような気分になる理由なんだろうね。ってのも、たとえばツアーでどこかの街に行ったら、そこで何日か過ごしたいんだ。でも、実際は次から次へ移動していくわけで、なのに自分は、せめて3日間くらいはその土地に滞在してみたいと思ってるわけ。だから、落ち着いて過ごせる普段の生活に戻れる、その点は僕にとって大事なんだよ。
――そうした一時的な、いわば遮断の生活を経て、再びバンドに戻ってきた時はどうでした?エネルギーを回復して、よりクリエイティヴになれた?
うん!それは間違いなく。
――良かったですね。ってのも、バンドから距離を置くことで興味が無くなる、逆効果になることもあるわけで・・・。
(苦笑)ああ~、その可能性もあった!確かにその通りだ・・・うん、そうならなくて、本当に良かったよ。ってのも、オフの時期を終えてどうなったかというと、まずひとつあったのが、「バンドの全員と、再びクリエイティヴなことをやりたい」って思いで。思うに、このアルバムの制作プロセスっていうのは・・・というのも、前2作のプロセスは、僕個人のプロジェクトって性格がかなり強いものだったんだよ。でも、今回は――まあ、曲はすべて僕ひとりで書き上げたにせよ、レコード作りの過程に、みんなにもっと関わって欲しいと思った。いわば、バンドのメンバー全員がこのレコード作りの一端を担っている、そういうレコードにしていきたいと思ったんだ。その意味で、今までよりずと全員が参加したレコードだと思うし、その結果、僕自身更に満足できたっていう。
――独裁政治ではなく、民主主義が始まった、と(笑)。
(苦笑)その通り!今回はレコーディングの過程そのものがもっと平等なものだったし・・・っていうのも、やろうと思えば、僕はとんでもないコントロール・フリークになれるからね。
――ひとり籠って曲を書いていた時期、たとえば自分のネガティヴな面により目が行った、ということは?自省的になって、自分の内面をもっと覗き込んで、そこでダーク・サイドに突き当たった・・・みたいな、へヴィな経験はありました?
いや、それはなかったな。作品としては重く聞こえるのかもしれないけど、曲を書いている間はそんなことはなくて・・・というのも、楽曲の多くは感情的にヘヴィなものだけど、それを歌にすること自体はそんなに苦しくはなかったし。それに、あの小村に滞在している間、僕自身はとても満ち足りた状態だったんだよ。その充足感が聞こえる瞬間は、このアルバムの中に何度もあると思う。ただまあ、僕のマインドっていうのは、放っておいても自然に物事のダークな側面に向いてしまう傾向があってね・・・だけど、そうやって相反する要素が曲の中にいくつか存在するってのは大切なことだと思っていて。たとえば1曲の中でだって、暗いトーンから始まって、でもラストは明るい感じに持ち上げていくってことも可能だから。
――それでも、セカンドはかなり暗い内容じゃありませんでした?
ああ!あの作品は・・・うん、あれは本当に、まさに闇の中で転げ回っていた、僕のそういう人生の一時期に生まれた作品だったからね。でも、今回は自分ももっとずっと充足した状態だったし、そう言えるのが、自分としても嬉しいんだよ。とは言ったって、新作の中にもやっぱりダークな思いは混じっているし・・・それはまあ、相手になるのは自分だけ、という状況があったからかもしれない。そうなると自分を責めたり、色々と考えるうちに自ずと出口が見えてきて、自分が本当に求めているものは何なのか、それを考えるようにもなって。それに、自分の仕事ぶりって点もあったんだよ。というのも、(前作の)ツアー中に一切曲を書いていなかったし・・・ツアーの間に曲を書くのは自分でも好きじゃないし、ほんと、今回はまったくの白紙から書き始めたんだ。だから、実際自分の中に曲があるかも分かってなかった・・・アルバム1枚分の音楽を、果たして自分はまた書くことができるのか?それも分からないままだったし、そうした自分自身に対する迷い・疑問なんかも入り混じった、そうだね、色んな思いのごった煮なんだ。だけど、思うに人間は誰もが皆、複雑にできてるわけでさ。だから何も僕ひとりの話じゃないと思うし、人間であろうとする、ヒューマンなレコードを作ろうとするのは、それだけ奇妙なことでもあるっていう。

Swim Until You Can’t See Land—Frightened Rabbit

――あなたは、よく肉体器官や病気を歌詞の中でメタファーとして使いますよね。流れ出す血が痛みのメタファーだったり、あるいは辛い思いを自分では治せない、切り取れない病い、と表現したり。このちょっと変わった暗喩のアイデアはどこから?
ああ、でも、ほんとそんな風に感じるからね。肉体的な痛みは、心の痛みと繋がっている・・・ある意味、病気を治すプロセスと同じように精神面での痛みを癒してあげないといけない、ほとんどもう、回復するためなら何だってやる、っていう。だけど、今回のアルバムに関して言えば、レコーディングの前にやったツアーが非常に消耗するものだったんだ。肉体的に負担がかかったし、ツアーの間ってのは、あんまり自分の身体をいたわらなくなるものじゃない?(苦笑)・・・だから、今回は身体の疲れが本当に身をもって感じられたし、とにかくもう、「ヘルシーな身体になりたいっ!」みたいな(笑)。その意味で、身体や健康に関するメタファーが出てきたんだと思う。
――分かりました。で、今作のサウンドに関してなんですが、1曲の中のコントラスト、たとえば耳を引くイントロから静かなパートになり、また最後に盛り上がる・・・という具合に、押し/引きのバランスがとてもいいと感じました。これまで以上に音楽の中の「空間」の使い方にこだわったんじゃないか?と感じましたが。
ああ、そう言ってもらえて嬉しいよ!そこは自分達でも上手くやれたと思うし・・・もちろん、色んな要素がたくさん詰め込まれたパートもある。けど一方で、レコードの中にはとてもすっきりしたパートもあって、そこはすごくいいんじゃないか、と。その点に関しては、前作のレコーディング時に多くを学んだ・・・っていうか、今回も一緒にやったんだけど、ピーター・ケイティス(※セカンドを共同プロデュース)って人は、曲の中で空間をどう使うか、いかにして曲の中にスペースを作り出すかっていう考えの持ち主なんだよね。僕はそこから多くを学んだし、前作を作ることで吸収していったそうしたアイデア――空間を敢えて残すとか、逆にその後すぐ、勢いのいい音でガーッと満たすことから生まれるインパクトといった事柄を、今回のアルバムに活用したかった。うん、だから、「バランスがいい」と言ってもらえて嬉しいよ。
――曲を音で埋め尽くすのって、ある意味厚着に似ていて、心理的に守られている、自己防衛でもあるんじゃないかと思います。その意味で、今回は逆にもっと勇気があるというか、音を剥き出しにして、それこそ肌や骨まで見せることができるようになったな、と。
そうだよね、だから、自分達のやっていることに対して、もっと自信がついたってことだと思う。で、それが作品からも伝わればいいな、と。バンドとして成長しているってことだし・・・シンプルな話なんだよ、アルバムを作るたび、バンドは良くなっていくべきだろう、と。だって、経験を通じて成長するわけだからね。たとえば、ライヴで自分の曲を演奏する行為を通じて自分自身について色々と学ぶことにもなるし、そこからまた、自分は何をどうしていきたいのか、というのも分かってきたり。だから、要は学ぶってことなんだ。
――コーラス・ワークは?前作、あるいはファーストでも使われていましたが、コール&レスポンスに近いコーラスのスタイルは、今回とても効いているなあ、と。これも、学んできた成果?
あー、あれはたぶん・・・たくさんライヴをやってきたけど、ここのところお客さんの多くが僕達と一緒に歌ってくれる、ってとこから来たんじゃないかな?ほんと、曲を大合唱してくれる感じなんだよね。で、僕としてはもう、あれがある種ライヴをやる時の一番楽しみなところというか、「オーディエンスがライヴに参加してくれて、共に歌ってくれる」っていう期待感があるんだ。だから、このアルバムに多くの声が使われている点、たくさんの声が何層も重ねられているっていうのは、ライヴでプレイするってシナリオをあらかじめ想定して書いたから、とすら言えるかもしれない。そうやって、人々も歌える、そうやって歌うことを通じてこのバンドの一部になっていく、というね。
――歌詞についてもうひとつ聞きたんですが、あなたの書く歌詞はとても正直で、時にあけすけに感じるほど私小説的な、しかも自分の欠点や醜態すら明かすものですよね。でも歌詞だけに集中せず音楽だけ聴いていると、曲そのものは高揚するものだったりする。あなたにとって、ああいう生々しくさえある歌詞を書くのは一種の浄化作用、カタルシスをもたらす行為なんでしょうか。
うん、そういう効果がもたらされることもあるよ。けど、ああいうフランクな歌詞を書くのは、僕が・・・他人とのコミュニケーション全般において、ちょっと不器用なところがあるから、というのもあるんだろうな。
――?そうは思いませんけど?こうして話しててもまったく問題ないっすよ!
(笑)いやいや、今みたく電話取材で話す、というのとは違う類いの会話、コミュニケーションって意味でだよ。もっと深いエモーショナルな面に関しては、自分の思っていることを人々に伝えるのが得意じゃないっていう。だから、たぶん・・・たぶんそこなんだよ、僕の書く歌詞があんなに率直なのは。ある種の事柄について触れたい時、あるいはそれを口に出して言うだけの勇気がある時に、自分が使える唯一の手法が歌詞に書くこと、というかな。歌詞・歌を書くプロセスというのはとてもプライヴェートなもので、他の人間がそれを耳にするってことは考えずに書くものなんだ。多くの場合は、とにかく自分自身に向けて書いているってもんだし、でも、たまに「あ、待てよ!」みたいな調子で、この曲、実はたくさんの人が聴くんだ・・・って自覚が湧いてくるっていう。まあ、それに気づいた頃には時既に遅し、なんだけど。だから、そんな風にあまり自覚なしに、率直に書くってところから始まるんだけど、それよりもむしろ僕自身にとっては、自分の考えをコミュニケートできる方法として、自分が唯一知っているのがこれだ、っていう方が近いと思う。というのも、僕は話し下手だからねぇ!(笑)まあ、今こうして喋っているとそうは思わないかもしれないけど、たとえば付き合いだとか社交で会話するようなシチュエーションでは、あんまり上手く話せない、自分を上手に表現できないんだ。
――じゃあ、今はプロのトークに徹して話している、と。
そうだよ!だって、これも僕の仕事の一部だからね!(笑)
――(笑)でも、当時の自分の感情に正直すぎて、たとえば数年年前に書いた自分の歌を、今歌うと照れくさい、歌いにくく感じる、ということは?
まあ・・・そうだね、自分がもはや曲を書いた当時と同じようには感じない、そこは面白い。ただ、あれらの曲を聴く人間の多くにとっては、曲の持つ感情はまだフレッシュなものなんだよ。で、それがあるから、僕もああした曲のエモーションを今も新鮮に感じられるっていう。言うまでもないことだけど、オーディエンスの側はすごく曲に入れ込んでくれているし、この時点まで来るとある意味もう、彼らにとっての方が曲の持つ意味合いは大きいっていう。というのも、僕自身にしてみれば、あれらの曲はもう3、4年前に終わった、過去の出来事なわけだから。だから、そうだな、その曲が今ここで発しているエネルギー、それを吸収していくだけ。たとえそれが、僕個人にとってはエネルギーを感じないものであってもね。でもまあ・・・照れくさい、とかそういう思いはないかな?これが、自分だけの思いを聴き手に伝えていく、ってものならもっと照れくさいだろうけど、そうじゃなく、オーディエンスがこっちに向かって歌い返してくれるわけだから。彼らの側も音楽に入れ込んで熱中してくれてるわけで、うん、その意味でもポジティヴなんじゃないかと思う。
――そのFRオーディエンスなんですが、一般的に言って、女性より男性ファンが多いと思います?
(笑)。
――あなたの歌詞は好きだし共感もするんですが、当然のごとく男性の視点から書かれたもので、そこが男性ファンにアピールしているように思います。で、あなたの歌の中では得てして女性は理解を超えた生き物、あるいはあなたに苦痛の種を与える存在として描かれることが多いなあ、と。
うん、(笑)まあ、言われた通りだよ!というのも、僕自身、女性を理解できたためしがないから。
――まあ、正反対の生き物だから、理解しようとするのが無理なのかもしれないですよね。わたし自身、男性のことはサッパリ分からないし。
(笑)そうだね!でもまあ、僕達のレコードを聴くことで、君が男性の思いを多少でも理解する助けになることを祈るよ!
――ハハハ!
でも・・・以前の僕達のオーディエンスは確かに男性中心だったけど、そのバランスもやや変化しつつあるんだよ。ただまあ、確かに初期の僕達に関してひとつ言えたのは、「男もエモーショナルになっていい」と感じられる、そういう類いのバンドってことで・・・というのも、僕は極端にクサくない、そういうやり方で自分の思いを表現しようと努めたし、まあ言葉使いとしては露骨だったり、荒っぽいものもあったのかもしれないけど、ありがちな決まり文句だけはなるべく使わなかったつもりなんだ。だから、その意味で聴く側の男性陣も、照れくさく感じることなしに、でもエモーショナルになれることができたんじゃないか、と。
――でも、スコットランドについて感じるのは――この認識が間違ってたら遠慮なく指摘してほしいし、スコットランドに限らずイギリスもそうだと感じますが――自分のスコットランドの知人は皆知的でアート好き、スマートな人達なんですけど、一方で、マッチョなカルチャーも案外と根強い国だなあ!と。要するに、「男は泣き言を言わず黙って、常に強くあれ。それが男の誇り」みたいな。
ああ、でもそれって本当だよ。
――だから、あなた達のレコードを最初に聴いた時、正直驚いたんです。子供っぽくクサい表現ではないにせよ、とても正直に痛みや弱さを歌っているので。で、それって、もしかしてスコットランドという土壌の中ではやりにくいことなんじゃないか?「めそめそしたバンド」と批判されることもあるのかな?と思ったんですけど。
うんうん・・・まあ、君の言うことは分かるけど、やりにくいってことはないよ。というのも、僕達の音楽が、特にスコットランドにおいて多くの人々とコネクトできている理由のひとつは、実際さっき君が言ってたような「マッチョ文化」と人々が格闘している、それがあって男性は自分の感情を素直に表現できない、ってところがあると思うから。スコットランドに限らず、イングランドの多くの土地でも同様だと思うけど・・・とにかく、うん、彼らが僕達の音楽を愛してくれる理由のひとつに、みんな本当は感じているけれど、それをなかなか口に出しては言えない、表現するのが楽じゃない、そういう感情を、僕達が歌っているってところはあると思う。

Nothing Like You—Frightened Rabbit

――あなたは独学で音楽を作り始めたそうですが、作曲、あるいは音作りに関して、あなたにとって大きな影響になったのはどんな音楽でしょう?
んー・・・。
――というのも、FRの音楽からはいわゆる典型的な「グラスゴー」サウンドは聞こえてこなくて、むしろアメリカのバンドに近いものを感じるんです。そこが興味深いし、どういう影響を感じてきたのかな、と。
うんうん、僕が影響を受けた・・・特に、曲を書き始めた頃に強く影響を受けた、よく聴いていたのはアメリカーナ系の音楽だね。たとえばウィルコだったり、アイアン&ワインなんか。
――ああ、C&W的な曲はやってますよね。
うん、でも、そういう嗜好は今も自分の中にあるんだよ。それに、ウィルコみたいなバンドは、僕にしてみればもう・・・自分達もああいう風になれたらいい、そう感じる憧れのバンドだから。っていうのも、彼らはレコードを作り続けて、しかも毎回クオリティの高い作品を作っているのはもちろん、多くの意味で彼ら自身の限界に挑戦してもいるわけで。僕達としてもそんな風に、自分達の限界にチャレンジしていきたいと思ってるから。でも、そうだね、曲を書き始めた初期の頃は、さっき言ったような、アメリカのフォーク~ルーツ・ミュージックの影響、要するに曲の中でストーリーを語る、というスタイルに影響された。だけど、そう考えるとスコットランド産の多くの音楽にもそういう面はあるんだよ。たとえばティーンエイジ・ファンクラブの音楽なんかは、アメリカ西海岸発の、カリフォルニア・ミュージックっぽいところがかなりあるし。だから・・・うん、フォーク・ミュージックの伝統という意味では、スコットランドとアメリカの間には大きなクロスオーヴァーがあるんじゃないか、と。
――そこは、わたしとしてもあなた達の音楽に魅力を感じてきた点のひとつです。音はロックだけど、メロディやコーラスの中に、トラッド音楽やフォーク・メロディ的なものがあるなと思ってきたので。
うん、でも、そもそもそうやって始まったものだったんじゃないかな。要するに、僕達の曲にしても、多くは僕の歌とアコギから始まっているわけだし、フォーク・ミュージックの大半が、そうやって「ひとりの人間が自分に歌いかける」みたいな形でスタートしたんだと思うし。
――その「フォークに根ざした感覚」は、あなた達のレーベル・メイトでもあるトワイライト・サッドの音楽からも感じます。サウンドだけ聴いていると、いわゆるシューゲイズ~ウォール・オブ・ノイズなんだけど・・・
うん、最高なバンドだよね!
――・・・よく聴くとメロディは民謡みたいだったり。
その通り!
――でも、この一種ルーツ・ミュージック~民謡的な要素って、今良く知られている他のスコティッシュ・バンドからはあまり聞こえてこないと思います。この、いわば過去への理解・回帰というのは、なぜ起きているんだと思いますか。単純に、世代の違いでしょうか?
ああ、それはあると思うよ。たとえばフランツ・フェルディナンドが注目を集めた頃、80年代に出てきたサウンド――たとえばグラスゴーで言えばオレンジ・ジュースだとか、その手の音を使っていたバンドがわんさかいたんだよ。でも、今起きているのは、それよりも更に古い音楽に遡る動き、というか。ってのも、フランツ的なバンドが多かった時期って、「本質よりスタイルがモノを言う」みたいな状況があったと思うんだ。で、(テレ笑い)まあ、僕達の写真を見れば一発で分かるだろうけど、僕達はスタイル値はゼロだけども、中身は間違いなくあるってバンドだと思うしねー。
――(笑)。
でも、中身のない、本質に欠ける音楽が多過ぎた、というのはしばらくの間確実にあったと思うんだ。で、その状況があまりに長く続いた結果、何が起きたかというと、その反動として正反対の傾向が生まれてきた、という。たとえば僕達やトワイライト・サッドみたいな連中だけど、僕達はそういったシーンには関わらなかったし、フランツ・フェルディナンドとか、特に大ファンってわけじゃなかったしね。別に、彼らが悪いバンドだとか、そういう思いは一切ないんだ。全然OK。ただ、なんて言うのかなあ、スマートに痩せた若い男がシャープなスーツでキメて、えらくかっこいいクールな音楽をプレイする・・・みたいな風潮への反動として、もうちょっとこう、ロマンスの熱を加えれればいいな、と!(笑)

フライトゥンド・ラビットのMySpaceはこちら!
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フライトゥンド・ラビッット「The Winter Of Mixed Drinks」を脱兎チェック!


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