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ティンテッド・ウィンドウズ

Tinted Windows

パワー・ポップ最新型?ティンテッド・ウィンドウズ発進!

photo:Damien Neva

皆さんもうお聴きになりましたか?――というわけで、09年に突如現われたパワー・ポップ・スーパー・グループ(時代がかったタームの二乗ですなぁ):ティンテッド・ウィンドウズのインタヴューをお届け。テイラー・ハンソン(ハンソン/Vo)、ジェームズ・イハ(元スマッシング・パンプキンズ/G)、アダム・シュレシンジャー(ファウンテインズ・オブ・ウェイン、アイヴィー/B)、バン・E・カルロス(チープ・トリック/Ds)から成るこのプリプリにイキのいいバンドは、70年代後半~80年代初期の(ちょっぴりいなたくも)泣きとパンチに満ちたバブルガム・ポップの快楽をエンジンに搭載し、今の切れ味で突っ走る確信犯ぶりが抜群に痛快だったりする。ハンソンもイハ君(彼のソロ作、今も大好きなんです・・・)もFOWもチープ・トリックもそれぞれ大好き!なミーハー・ポップ好きの筆者がこのグループの誕生に鼻息荒くなってしまうのはまあ当然の話かもしれないけど、「優れた各パーツの寄せ集め」に終わることなく「ありそうでなかった00年代のパワー・ポップ像」をしっかりクリエイトしているのは、エゴ・フリーな創作環境の中で各人が自分達の好きな音――ここではニュー・ウェイヴ味のパンク・ポップやFMラジオ・ヒットになる――とてらいなく向かい合い、その上でノスタルジックなファンタジーに自分達の持ち技とひねりを加えてフレッシュに再構築しているからだろう。なんで「ありそうでなかった」かと言うと、たとえばの話、当時のパワー・ポップ・バンドにテイラーみたいな正真正銘の美青年ヴォーカリストは存在しなかった(あのジャンルは、ある意味筆者のような永遠にルーザー&オタクなポップ愛好家の宝物なので)。そのテイラーが聴かせる出色ものの表情豊か・かつ音楽反射神経が冴えわたるヴォーカリゼイション、ジェームズのギターもバキバキに全面解放(アコギのセンスもナイス!)等々、ティンテッド・ウィンドウズという普段とは異なる場/キャラクターを得て、ノリにノってるメンバーの楽しげな様子が伝わってくるのも微笑ましい。
この一見意外な、しかしよく考えればうーん納得!なユニットの発案者のひとり:アダム・シュレシンジャーに話を聞かせてもらったが、この人はFOWやアイヴィーのソングライター/パフォーマーであると同時に、プロデューサー/オーガナイザーとしてもシャープな視点を持っている。「僕とテイラーとジェームズのアイデアだよ」と謙遜気味に話していたけど、ティンテッド・ウィンドウズの音楽性やイメージなど、ベタ(ドラムにちゃんとロゴが染め抜かれてます!)とクール(イハ君のウォーホル・ルックが素敵)の紙一重のバランスで釣り合わせるセンスとポップ・ヒストリーへの目配せは今回も随所に光っているし、彼が中継点として機能しなければこのプロジェクトは成り立たなかったんじゃないか?とも思う。ともあれ、09年に現われたダーク・ホース的ポップ旋風=ティンテッド・ウィンドウズ、彼らの奏でる音楽の掛け値なしのFUNに浴しつつ、このユニットのいちばんハマる地:日本(チープ・トリックの「At Budokan」は名盤!)に、彼らがツアーしに来てくれることを祈願せずにいられなかったりします。

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――先日のSXSWでのライヴの手ごたえはいかがでした?あれが実質的なデビュー・ライヴだったと思いますが。
うん、楽しかったよ!全員エンジョイしたし、まあちょっとばかしクレイジーではあったけど・・・
――(苦笑)。
まずオクラホマのタルサ、テイラーのホームタウンに行って、そこで2回リハをやったんだよね。タルサにあるちっちゃなバーでプレイしたきりで、そこからオースティンに向かってSXSWでの大人数を前にしたショウに臨んだっていう。だから、ちょっとアガりもしたよ。
――全員が業界ベテランでも、やっぱり新人は新人ですしね。
だね。それもあったし、あと、あの時点ではまだ誰もアルバムの曲を聴いてなかったというのもあったな。まだリリースされてない、誰も知らないレコードを大勢の前でプレイする、あれは妙な感じだった。でも、YouTubeでビデオを見て、1、2曲は知ってるって感じの人達は何人かいたっけ。と言っても、あの映像はウォームアップの時に撮影したからあんまりいい内容じゃないんだけども(苦笑)。
――このいわば「パワー・ポップ・スーパーグループ」の登場にエキサイトすると同時に、プロジェクトのアナウンスからシングルの登場までの期間が短く「突然!」という印象もあって驚いているんですが、もとはあなたとテイラーが長い間コラボレーションを希望していたところから始まったそうですね?こうして実際にアルバム・プロジェクト~ツアーにまで発展したきっかけは?
そうだね、テイラーと僕とのコラボみたいなもので・・・っていうか、僕とジェームズとテイラーのコラボってことになるね。で、アイデアが浮かんだのは3年位前だったかな。テイラー・ハンソンと何かやりたい、彼とラウドなギターたっぷりの音楽をやりたいって思って。で、「この思いつき、どう思う?」って、まず最初にジェームズに話したら、即ノってきてくれてね。「それはグレイトだよ、やろう!」って調子で。そこでテイラーに電話して・・・テイラーとは僕は実は96年くらいからの知り合いで、いつも一緒に何かやろうよって話してたんだけど、これまで実現に至らなかったんだよね。で、彼に連絡してこの奇妙なアイデア、新バンドをやるって案を持ち掛けたんだ。君がヴォーカルでジェームズがギターだよ、って。で、彼もすぐノってきてくれたんだけど、バンドのアイデアが生まれてから実際にみんなが顔を合わせるまで、とても時間がかかってしまってね。
――それはやはり、メインでやってるバンドや他のプロジェクトで忙しくて単純な話スケジュールが合わなかったから?
そうだね。スケジュールのやりくりが複雑だったし、ギリギリまでこのバンドについて発表しなかったのもそのせいなんだよ。っていうのも、僕としても正直このバンドが実現するかどうか分からなかったから。2年くらい前だったかな、いったん取り掛かって少しやってみたんだけど、そこからまた1年くらい何も事が進まなくて・・・テイラーをもう一度ニューヨークまで引っ張って来れなかったんだよ。彼はハンソンでツアーしてたし、僕も僕でツアーしてたり。だから、誰にも明かさなかったんだ。だって、恥ずかしいじゃない?さんざん話を吹いておいて、いざとなったらプロジェクトが立ち行かなかった・・・なんてさ。
――ホラ吹きって言われそう。
そういうこと。「あいつ口ばっかで最低だぜ~」みたいな。

Kind of A Girl—Tinted Windows

―(笑)で、アルバムからもフレッシュなエネルギーと躍動感が伝わってきて、スタジオでこの作品をレコーディングするのはとても楽しかっただろうな・・・と想像できます。ジェームズとテイラーに関してはあなたにとっても長い友人/知り合いなわけですけど、やはりセッションそのものがリフレッシュされる体験でした?
うん、その通りで、すごくリフレッシュする創作環境だったね。っていうのもほんと――それこそがこのプロジェクトをやる唯一の動機というか・・・まず、何よりやっていて楽しいアイデアだし、新たな顔ぶれと音楽に取り組むこと自体楽しい。長く一緒にプレイしてきた相手との間に生まれる、いわゆる「バンド内の政治的駆け引き」云々、みたいなものからも解放されるからね。で、レコーディングのプロセスそのものはすごく楽だったし、きついことはまったくなかった。だから、このプロジェクトをやってる間はそのいいスピリットを保ち続けたい、そう思ってるんだ。
―でも、いったんツアーに出たら、やっぱり普通のバンドみたいにいがみ合いが始まるかも?
(苦笑)それはないと思うなー。でも、すごく妙な感じはあるよ。っていうのも、このバンドをやろうと思い立って、曲を書いてレコーディングして・・・そこまではイノセントなものだったわけだけど、レコード会社との交渉を始めて、そうなるとそこに弁護士も絡んできて、更にはマネージャー、ツアー・マネージャーって具合に膨らんでいって、突如としてこう、それまで無邪気だったのが「プロフェッショナル」なものになってしまって、見方を変えざるを得なくなってくるっていう。だから、このそもそもの始まりってなんだったっけ?って点を常に思い出すようにしないと。
―こうして作品が完成してリリースされることになって、エキサイティングであると同時にちょっと悲しい、スタジオで起きたあの無邪気でマジカルな繋がりを失うかも、みたいな思いもある?
んー、でもあの思いが消えることはないと思うな。みんながこうしてわざわざ時間を作ってこのバンドに取り組んでいるのは、とにかくやってて楽しいからだし。だから醜悪な状況になる、なんてことはまず起きないと思うし・・・大事なのはまず、レコードの中にそのスピリットを掴んで残すってことじゃないか、と。だから、そこから先はさほど重要じゃないっていうか。レコードの中にその感覚さえあれば、他の部分はなんとかなるっていうね。
―音楽的なリファレンスとして本作には70年代後期~80年代初頭のパワー・ポップがあるわけですけど、こうしたバンドの方向性・コンセプトは最初から決まっていた?それともプロジェクトが進むうちに変化してきた部分も?
思うに、その時期――70年代末から80年代初期の音楽ってのは確かに影響としてあるんだけど、僕達がやりたかったのは、そこにラウドなギターとモダンなプロダクションを組み合わせるってことだったんじゃないか、と。だからたぶんもうちょっと今風だし、そうだなあ・・・過去10年くらいの音になってるんじゃないかな。それに、僕としてもこのアルバムが70年代後半っぽいサウンドだとは全然思わないし。まあ、スピリット面ではそういうノリがあるのは確かだけどね。ってのも曲はとてもシンプルだし、歌詞もポップ調でストレート。ギター/ベース/ドラムだけの本当にシンプルなもので、オーヴァー・ダブもほとんどやってない。でも、と同時にちゃんとモダンに聞こえるレコードじゃないかと思うんだ。そう、それがアイデアだったんだよ。そのふたつを組み合わせるっていう。
―確かにメロディックでキャッチーですけど、プロダクションに関しては洗練されててシャープですよね。たとえばバック・トラックに小さなノイズが混じってきたり、剥き出しでパンク、直球な音作りではない。
うん。それと共に、この音にはアグレッシヴさも必要だったんだ。そこで、ジェームズの存在に特に大きな意味合いが出てくることになるわけ。ってのも、彼のギターはすごく攻撃的だし、全然メソついたところがない。すごくガリッと歯ごたえのある、ディストーション・ギターなんかが好きなプレイヤーだし、バン・Eにしても、彼がプレイする時は本当にハード&ファストなスタイルで、エネルギー満開だからね。
―最年長だけど、一番元気のいいプレイヤーだったりして?
アハハッ!そうかも。うん、年は上だけどすごくエネルギーいっぱいの人だよ。で、そこがパワー・ポップってことなんだけど・・・思うにパワー・ポップっていうのは、すごくアグレッシヴになれる時もあれば、一方でメソついた音楽にもなりうるっていう。で、僕はパワー・ポップのメソついた面は正直そんなに好きじゃないから(笑)、自分達がやるんならパワフルにしなくちゃって考えたわけ。
―アルバムにいわゆるスローなバラッド曲がないのもそのせいなんですね。
うん。その手のレコードは、1、2曲はバラード調があるもんだよね。
―で、ソングライターが実質3人いるバンドなわけですけど、ソングライティングのプロセスはどんなものだったんでしょう?
ほとんどの曲を僕が書いたね。でもジェームズは2曲書いてテイラーも1曲、それと1曲ではテイラーと僕で共作してる。でも、みんなこのバンドのコンセプトに沿って曲を書いていたんじゃないかと思う。アイデアについて話し合いもしたし、そこからそれぞれが曲を持ってきたっていう。だから・・・テイラーとのコラボ1曲を除くと、あんまり「共作」って風な作曲プロセスではなかったね。各々が楽曲を持ち寄ったっていう。
―4人の個性が集まったとはいえ、バンドの頭脳というか、サウンドや楽曲の土台になる部分はすべてあなたが作り上げたもの、という?
いや、でもレコーディングする段階でコラボレーション作業になっていったんだよ。それぞれがアレンジに貢献してくれてああいう音になったわけだし、だから各人の影響はレコードのサウンドにそれぞれ含まれてるわけだけど、曲作りという面に関してはそこまでいかないっていう。
―分かりました。それと、この作品を聴いているとあなたのソングライティングがファーストの頃のFOWを思わせるものになったな、という気もするんです。ある意味、この作品で原点回帰したのかな?とも感じましたが、いかがでしょう。
んー、ある意味そうだったかも。FOWのファーストはこれまでの作品中でも一番パンクなノリがあるし、とてもシンプルでスピーディに作った、なんというかルーズなところのある作品で。だから・・・そうだね、自分の中に「ああいうことをもう一度やりたい」って思いが、どこかしらあったんだと思う。とにかく自分でやってて楽しいからやるっていう、その感覚ね。というのも、FOWは1枚目の頃からかなり成長してきたし、それは良いことなんだよ。過去何枚かのアルバムにしたって、ほんとに色んなことをやってきたし。だから近頃では、アルバムの最初から最後まで、それこそエネルギーの連打!みたいなことはないっていう。メロウな曲もあればミッド・テンポの曲もあるし、凝ったアレンジで聴かせる曲もありって具合で。
―ええ。それにFOWではアルバムの収録曲数も多くてそれが幅広さにも繋がっているわけですけど、ティンテッド・ウィンドウズは簡潔で、アルバムにしても今の時代とは思えない40分以下の短さで・・・。
でも、アルバムって昔はそういうものだったじゃない?
―ええ、でもそういう時代はそもそも忘れられつつあるでしょ。若い世代の音楽ファンには、「LP」って感覚すらもう薄いんじゃないですか?
だよね。でも、だからこそ昔に戻ってるとも言えるんだよ。というのも、今の人達はその多くがアルバムなんてどうでもいいと思ってるだろうし、大概が「あの1曲をゲットできれば充分」みたいなものだと思う。だから14~16曲も1枚のアルバムに収録するなんて、それこそ曲を捨てるようなもんなんだよね。もちろん、ハードコアなファンは例外だよ!ただ・・・多くのキッズにとってはシングル曲さえ聴ければOKって調子だろうし・・・その意味で時代が50年代に遡ってるようなものだと思う。シングル文化が主流だった、あの時代にね。妙な話に聞こえるけど、みんなが今やってるのは現実そういうことなんだよ。iTunesダウンロードだのウェブサイトで1曲配信して、そうやって発表していった楽曲を1年後くらいにひとまとめにして、でアルバムとして出すっていう。
―さっきジェームズのギター・プレイの話が出ましたが、彼はこれまでポップというよりヘヴィでビッグなバンドで演奏してきた人というイメージが強いわけですよね。彼はティンテッド・ウィンドウズのあからさまなポップさに対して一切抵抗なかったんでしょうか?
でも、ジェームズと僕の趣味はすごく似てるんだよ。僕達どっちも好きっていうレコードはたくさんあるし・・・確かにヘヴィなバンドで演奏してきたことで知られてるけど、実際の彼の個人的な音楽趣味はとても幅広い。彼はポップ・ミュージックのファンでもあるんだと思うな。
―まあ、彼のソロ・アルバムからしてまったく異なる作風でしたしね。
そうだよね、あれはとてもこぢんまりした、穏やかなレコードだったし。
―そのギャップに戸惑いは感じないんでしょうか?「ゴス王子」的なヘヴィなパブリック・イメージと、その中に隠れたポップ好きって面と?
まあ、ちょっとばかし年をとるののいい点は、自らのパブリック・イメージへのこだわりがなくなってくるって点でさ(笑)。とにかくやりたいと思ったらやる、それだけだっていう。でも、それと同時に・・・このバンドのコンセプトって、それそのものが本当にクレイジーなものだから、パブリック・イメージの面すら置き去りにされてしまうというか。要するに、人々はこのバンドに対してどう受身をとっていいか分からないっていうね。このバンドのニュースを耳にして、まず出てくるのは「はぁ?」ってリアクションなわけ。「ハンソンとスマッシング・パンプキンズが一緒にバンドを組むぅ?なんじゃそりゃ?」みたいな(苦笑)。でも、レコードを聴いてもらえば理解してもらえると思うんだけどね。ジェームズのスタイルはちゃんと健在なわけだし、ただ彼のプレイをこれまでの文脈とは違うところで聴けるっていう。
―でも、まあ・・・これは私がパワー・ポップやポップ好きな日本人だからかもしれませんけど――ティンテッド・ウィンドウズの話を聞いた時、さほど違和感を覚えなかったんですよね。ジェームズとあなたは友人だし、パンプキンズはチープ・トリックのファン。で、テイラーとあなたがお互いリスペクトし合う仲なんだろうなというのは簡単に想像できたし。
そうだね、でも、ある意味日本人の人達の方がむしろピン!と来るバンドなのかも、と思うよ。これがアメリカだと、中には「ハンソンって90年代のティーン・ポップ・バンドでしょ」、FOWは「ああ、あの〝ステイシーズ・マム〟の人達ね~」ってイメージしか持ってない人もいるし、パンプキンズはパンプキンズなわけで・・・チープ・トリックに至っては、もはや忘れられてるとか、70年代の頃の彼らしか記憶にないって人もいるわけ。だから、君が即ピン!と来たようなそうしたコネクションが、彼らには見えないわけ。まあ、こうしてこのバンドのストーリーが広がって、実際にレコードを聴いてもらえれば意味も通じると思うけどね。ただ・・・ネットのどこかで読んだんだけど、ティンテッド・ウィンドウズのデビューが最初に報じられた時だったかな、「このバンドはどこかの企業が会議室で、〝さて、このミュージシャン連中をどうすればいい?彼らをどう活用しよう?〟って感じでひねり出された企画バンド、作り物だろう」なんて形容があって。要するに、どこかの会社が知恵を絞って考え付いたアイデアに違いない、みたいな。
―(苦笑)。
でも――なんでそんなこと言えるんだ?って感じだよ。いったいどこの会社が、こんなバカげたアイデアを思いつくだよ~?っていうさ!(苦笑)
―メディアにはシニカルな人達もいますからね。
そうだね。
―自分の手に余る、理解できないものは頭から否定する、みたいな音楽ファンなんじゃないですか?
うんうん。だけどまあ、そういうことを言い出す連中ってのは、レコード業界が本当はどんな風に動いているか、その実際的な概念をまったく把握していない人達だってことでもあって。っていうのも・・・レコード会社の側がそういうアイデアを自分達の頭からひねり出せるくらいクリエイティヴだったら、今頃レコード会社が苦境に立たされてることもなかっただろう、っていう。
―(笑)そ、そういうこと言って大丈夫?この電話取材、レーベルのスタッフにモニターされてるかもしれないですよ・・・!
クックック!(笑)
―それと、このバンドのヴィジュアル・コンセプトやルックスからは、一種想像上の70~80年代バンドを作ってそのイメージを遊ぶ、みたいなノリもありますよね。
その通り。だから「Get The Knack」の裏ジャケみたいなイメージを考えてるんだよね。それってまあビートルズのパクりでもあるんだけど、スタジオ内に作ったステージで、バンドが演奏してる様子を捉えた写真を使う、みたいな。それを70年代調でやってるんだよ。
―ぜひジョン・ヒューズにもう1本作ってもらって、あなた達にサントラ音楽を担当してほしいですねー。
それ完璧(笑)。

Messing With My Head—Tinted Windows

―テイラーについてお聞きしますが、あなたから見た彼のシンガーとしての評価は?
彼はほんとに最高!それがそもそもこのバンドをやりたかった理由でもあるし、彼はとにかく――天才だからね。で、ほんとすごいのは、彼は素晴らしい歌い手であるばかりじゃなくソングライターとしても優れているし、何より、とても音楽的な人なんだよね。最初に1曲やってみた時、その曲では彼がドラムまでプレイしてくれたくらいで。ドラマーとしても達者だし、それにハーモニー・パートも即座に理解してくれて・・・そうだな、僕が知る限りでも、彼はもっとも熟達したミュージシャンのひとりだね。
―もしも彼がソロ・レコードを作ることになったら、プロデュースしたいですか?
うーん、でも、彼がソロをやることなんてあるのかな~?!というのも、ハンソン兄弟について言えるのは、あの3人は本当にお互いをすべて捧げ合ってあのバンドをやってるってことで。でも、もちろんもしも彼であれ彼の兄弟であれ、僕と仕事したいって言うんならこっちは喜んで!ってとこだけどね。ただ・・・彼らがハンソンというグループをどれだけ真剣に捉えているか僕はよく知ってるし、それを考えても、彼がいつかソロを作るなんてあり得そうな話だとは思えないっていう。まあ、分からないけども。
―なるほど。でも、あなたとテイラーのコラボということで、こうした派手な打ち出しのパワー・ポップ・バンドではなく、もうちょっと地味でSSW的な内省的なプロジェクトになるって可能性はなかったんですか?
まあ、僕とテイラーが一緒に曲を書いただけで終わり、になる可能性もあったわけだよね。だけど、彼にとってはあくまでハンソンが主体だし・・・でも、このバンドについて話し合ってアイデアに取り組み始めたごく初期の段階で、彼はすぐにこのレコードでのヴォーカルのトーンの違いを掴んでくれてね。というのも、ハンソンはR&Bやソウルの影響が強いし、歌い方そのものもR&Bっぽい。でも、ティンテッド・ウィンドウズにR&Bなところは一切なくて、とにかくロックだよねって話をして。だから声の調子にしてもいつもとまったく違うものなわけだけど、そこを彼は即座に掴んでくれたんだよね。完璧だったし、とてもナチュラルにモノにしてくれたな。
―このプロジェクトは、彼にとってもロックな面を吐き出せるいい機会なのかもしれませんね。ハンソンの場合コーラス・ハーモニーが多いし、音楽のトータルな中の一要素として声が使われて「フロントに出る」ってことがあまりないでしょうし。
うん。だからある意味、彼にしてみたらほとんどもう・・・ある種キャラクターを演じているようなものなんだと思うよ。いつもとちょっと違う役、キャラを演じてるとでも言うのか。と同時に、「演じて」いるだけじゃなく、ちゃんと正真正銘彼のフィーリングも含まれてるんだけどね。
―続いてバン・Eカルロス。彼は、少なくともテイラーにとっては彼の父親世代のプレイヤーと言えるし、彼がチープ・トリックでやってきたことへのリスペクトの念はメンバー全員抱いていたと思います。そんな彼との共演の感想を教えてください。
確かに僕達もちょっと威圧されはしたけど――でもすごく地に足の着いた人だったし、すぐに意気投合してね。スーパーいい人だったし、イージー・ゴーイングでもあって、このバンドのアイデアについても最初からすぐにノってくれた。まず何曲か彼にデモを送ったんだけど、気に入ってくれたっていうから、そこで航空チケットを送って、彼にニューヨークに飛んでもらうことにして。で、レコーディングして一丁上がりっていう。数日間で彼のドラム・パートを録っていったね。
―レコーディングのセッションそのものは短かったんですか?
えーと、そうだな、たぶん・・・何回かに分けてレコーディングしたけど、トータルではたぶん1ヶ月くらいだったんじゃないかと思う。
―この作品に合わせてティンテッド・ウィンドウズとしてツアーも行うわけですが、今年1年はアルバム・プロモーションに費やす感じ?
んー、でも不可能なんだよね。残念な話だけど。っていうのも、全員既にそれぞれ他にやる仕事が決まってるし、だからまあ、その時その時で自分達にやれることをやるだけっていう。チープ・トリックはこの夏ツアーをやるから、それが一番の難関だろうな。でも、これから小さなショウもいくつかやるし、アメリカのテレビにも出演する予定。で、それが終わったらまたいくつかライヴを組んで、ラジオ・プロモもやっていく予定なんだ。だから、ほんと全員のスケジュールが空いている時を見極めながら、その都度レコード会社と相談して、可能な限りベストなことをやるだけだね。
―ぜひ日本には来て欲しいです!
うん、それは間違いなくアリだと思うよ。バンドの全員日本には行きたがってるし、何があっても絶対行くぞってみんな言ってるくらいで。ただ、とにかく時間の問題なんだよねー(軽くため息)。夏フェスに出演するって案も話し合ったんだけど、果たしてチープ・トリックのUSツアーをの兼ね合いがどうなるか、僕にも正直分からなくて。でも、その案が無理だったとしても、なんとか今年の後半には日本でツアーしたいと思ってる。
―良かった!で、FOWの方はいかがですか?ここしばらく音沙汰がなくなってる気もしますが・・・
ああ、新作にはずっと取り組んでるよ。実際今、スタジオで・・・8曲くらい手掛けてるかな。もっと追加で書かないといけないけども。でまあ、8曲やってはみたけど、自分としてはそのうち4曲しか気に入ってないんだ(苦笑)。
―自己に厳しいですね~。
でもさ、僕達に関してはいつもそうだったわけだし。まずレコーディングを始めてみて、そこからどこに向かうかは自分達でも正直分かってなくて、とにかく色んなアイデアを試したり、違う方向性を探ったりしていくうちに1、2曲、自分達自身でも心からエキサイトできるような曲が生まれてくる。で、そこからまた曲作りに戻って、作業を続けていくっていう。
―ティンテッド・ウィンドウズは好きなんですが、アルバムがヒットしても本家の存在を脅かすことがないのを祈ってもいるんですよね・・・。
あ、それは絶対にないよ!メイン・バンドの座を奪うってことはないから。
―FOWやハンソンではできないアイデアを活用するためのアウトレットみたいなもの、と。
そうそう。だから、それがこのバンドをやる根拠でもあって・・・僕にとっては特にそうなんだろうけど、このバンドのアイデアを思い付いた時、「何か他のことをやりたい」って思いでムズムズしていた頃でね。っていうのも、アイヴィーで5枚、FOWで4枚もアルバムを出してきて、そうなればどんなバンドであっても、ソロやサイド・プロジェクトはやりたくなるものだしね。
―音楽そのものはエネルギッシュで若々しいものですけど、参加しているメンバーはそれぞれ互いの立場や状況を理解しあって尊重してる、とても健康的でアダルトなバンドってことですね。
うん、だからこのバンドのメンバーはみんな、今こういうプロジェクトを楽しめるようになるくらい長く音楽活動を続けてきたってことなんだろうね。というのも、バンドを始めたばかりの若い頃はお互いにテンションも高くてケンカもしょっちゅうだったわけだけど、今はもうなんというか、自分の楽しみのために音楽をやる、それをやれるチャンスがあることそのものに感謝している、みたいな。だからみんなリラックスしているし、エンジョイしようとしてる。それにまあ・・・たとえばの話、僕がティンテッド・ウィンドウズをどうしてもやりたい!ってことで他のすべてのプロジェクトを投げ出してこのバンドに打ち込もうとしても、残るメンバーに同じことをする期待するわけにはいかないから(苦笑)。だから、メインのバンドが乗っ取られるなんてことは起きないよ。
―今回のレコーディングはそれそのものがいつもと違うフレッシュな環境・体験だったわけですけど、それがFOWあるいはあなたの他のプロジェクトにどう反映されていくと思います?
顔ぶれが違うからそもそも違うってのはまずあるけど、なんというか・・・ティンテッド・ウィンドウズをやったことで、レコードを作る理由/動機を思い起こしもたし、エンジョイしているからやる、自分自身が聴きたいと思う音楽をやる、そうやっていい音楽を作っていくんだって姿勢を思い出すことにもなったね。何かいいものを手にするためには、そういうところから始めなくちゃいけないっていう。で、FOW新作について言うと、これまでのところ作業はとてもリラックスした雰囲気で進んでいるんだ。それは間違いないね。ケンカや言い合い、ドラマが尽きなかった過去2作の制作プロセスに較べて、すごく楽しんでると言えるよね。まあ、メンバーみんな少しだけ年をとって、以前よりリラックスできるようになったってことなのかもしれないけど。でも・・・そうだな、うん、スムーズに進んでると思うよ。
―この作品についてパワー・ポップという形容はついて回るし、比較の対象、あるいはインスピレーションとしてナックやバスコックス、そしてもちろんチープ・トリックの名が上がっています。FOWは言うまでもないですが、ハンソンにも時に「パワー・ポップ」というカテゴリーが当てはめられてきたわけですが、このタームを正直どう思います?
「パワー・ポップ」という言葉にはいい含みと悪い含みのどっちもあるけれど、思うに・・・ギターが鳴っててメロディのある音楽をプレイすれば、それはすなわちパワー・ポップって呼ばれるわけだよね?でも、その広いタームの中にあっても実は本当に色んなことができるんだ。たとえばFOWにははっきりした歌詞のスタイルがあると思うけど、それってティンテッド・ウィンドウズの歌詞とはまったく違うものなわけで。ティンテッド・ウィンドウズの歌詞に関しては、意図的にシンプルかつベーシックなものにした。♪あの女の子が気になって仕方ない・・・みたいなノリで、要するにかしこぶったり茶化したり、あるいは皮肉がこめられているとか、そういうのはティンテッド・ウィンドウズには求めてなかった。FOWってバンドはその反対で、ストーリー・テリングとキャラクター作りがまずあって、たとえ「僕は・・・」って一人称で歌っていても、必ずしもそれがシンガー本人の言葉ではないっていう。だから、両方のバンドを「パワー・ポップ」って呼ぶのは、それぞれのバンドの本質の違い、そのふたつの間の差異を見落としてるってことなんじゃないかな?
―確かにティンテッド・ウィンドウズの歌詞はシンプルかつストレートで、キッズ的ですよね。
でも、そうやってとてもシンプルな歌詞の方が、実は書くのはとても大変なんだよ!
―うん、あなたのいつもの書き方を封じた、手足をもがれたって感じだなと思います。
うん、それもそうだし、あと・・・もうシンプルな曲はこれまでに山ほど書かれてきたわけで、そんな中で更にシンプル、かつ聴き手の頭に残る、そういう曲を書くのは難しいチャレンジだってのもあるんだよね。たとえばロマンティックスの「What I Like About You」みたいな曲を聴くと――あれってほんと天才的な曲なんだけど――でも、たぶんメンバーにしても、いったいどうやってあの曲をモノにしたか自分達でも分かってないと思うんだよね。というのも、あの曲の入ってるアルバムで、あの曲くらい出来のいい曲なんて、他にないから。ほんと、どうやってこんな曲が書けたんだ?みたいな。メロディもシンプルだし、歌詞もすごく単純で、♪What I like about you/You hold me tight・・・なんて感じだし、ほんとビートルズの1枚目みたいなもんで。だからすごくベーシックなんだけど、でもそういう曲が時にマジカルな火花を宿してたりするもんなんだよね。書いた本人にもどうやってあの曲が生まれたかサッパリ分からなくて、それこそ残りの人生を費やして同じような曲を書こうとするんだけど、それは二度と起きないっていうね。

What I Like About You—The Romantics

―(笑)で、いつも忙しいあなたですが、FOW新作以外のプロジェクトとしては今何を?
あ、今は特にそれ以外ない感じだよ。でも、ザ・サウンズの新作で何曲か、ジェームスと一緒にレコーディングをやったな。それは2、3ヶ月前に終わった話だから、そろそろ彼らの新作が出る頃なんじゃないかな。でも、ほんと今はティンテッド・ウィンドウズにかかりっきりな感じなんだ。っていうのも、僕達マネージャーがいないから、僕がビジネス面での仕切りの多くも担当していて(笑)。だからマネージャーを持たないバンドなんだけど、その一方で山ほどマネージャーを抱えたバンドとも言えて。ってのも、ハンソンのマネージャー、チープ・トリックのマネージャー、FOWのマネージャー・・・って具合に彼らも絡んでくるし、とにかく関る人間が多いんだよね。だからちょっと混乱気味ではあるよね。
―・・・私があなただったら、面倒で滅入りそうな状況ですね、それって。
アハハハハ!
―で、これから2、3年たって、またこの「スーパー・グループ」が再び顔を合わせる可能性は?
んー、そればっかりはなんとも言えないんだ・・・。そうなったらいいなとは思うけど、ファーストの反応とかを見ないと分からないよ。

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