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2008/11/25

Rolo Tomassi

Kids Are All Right

清少年よ、大志を抱け――英シェフィールド近郊出身、平均年齢18歳のフレッシュな5人組ロロ・トマーシのデビュー・アルバム「Hysterics」を聴いていると、そんな思いが浮かんでくる。ヤングなバンドだからって庇護者ぶるつもりは毛頭ないし、USモダン・ハードコアとスクリーモ、マス・ロックにメタルコアまで飲み込みシャッフルした知的で複雑怪奇サウンド(この音を爆音で被ってると、顔面表皮が凝固してピキピキ割れてくる気がします)のカタルシスは一級品。カラフルなキーボードの印象的なリフを縫ってチェーンソー・ギターが切り込み、リズム隊が鼓膜に容赦なくドリルを穿つ。歌メロさえほぼ排除したアブストラクトでカオティックな音の塊が吹き荒れたかと思えばタイトな演奏は瞬時にミニマルな静寂へ収斂、再びスイッチひとつで激バーストしてみせる運動能力はすさまじい(ライヴでもこのブレイクを完璧に披露してくれます。かっこいい)。紅一点でいやがおうにも眼を引くヴォーカルのエヴァにしても、「テニス部エースの美少女」風清楚な佇まいからは想像もつかないデス声(たまに普通に歌う時はすごくかわいらしい声なんだけど)を放射する豹変ぶり、さながらパンク版ジャンヌ・ダルクもかくやの凛々しさだ。聞き覚えのないバンド名かもしれませんが(エルロイの「LAコンフィデンシャル」に出てくる名前に引っ掛けてます)、お見知りおきを。
現在の段階では音にもうちょっと重さと太さをプリーズ・・・とも思うが(そこらへんはアメリカ人とイギリス人の身体力の差か?)、ライヴ重視のバンドだけに場数を踏むことで今後逞しさを増すだろうし、あまり心配はしてない。何よりベタなギター・アンセムや安直なバラッド、ヒップスターのダンス・ポップが乱立する現UKシーンに冷水をぶっかけるような硬派なサウンドで、しかし奇妙にポップなフックでいっぱいのアート・パンクを叩き出す新人のひとつとして評価するし、ジャズからプログレまで旺盛に吸収しながら広がり続けるロロ・ワールドは聴き手を甘やかすことなくその知性や感覚を押し広げることにもなるはず。リスナーを見くびらないバンドって、素敵ですよね?キーボード&ヴォーカルで活躍・妹エヴァとテンション高い応酬を聴かせるジェイムスに話を聞いたが、どこにもフィットしない「はみだしっ子な存在」をエンジョイする賢さと若いのに早くも肝の据わったオタクぶり(笑)は好感度高し。怖いもの知らずなエネルギーとイノセントな好奇心~音楽欲を保ち続けてほしいし、こんなイキのいいバンドによって、(彼らの前に存在した)多くのUKアングラ・ロッカーズ/ハードコア・パンクス達がなし得なかったブレイクスルーが達成されたらいいな・・・と思っている。

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――今UKツアー中でしたっけ?
うん、ブラッド・レッド・シューズとのツアー中だよ。
――調子は上々ってとこ?
そうだね。自分達のツアーを終えたばかりだし、その後にこうやってなんというか・・・僕達とはそんなにサウンドが近くないバンドと一緒にプレイすることで、新しいオーディエンス、ロロ・トマーシをよく知らない人達に向けてプレイできるからね。
――でも、そういう観客の反応は正直どう?ロロを見て仰天してるって感じでは(笑)?
そうだな・・・でも、色々だと思うよー。僕達の音楽を前に聴いたことがあるって人はそんなに多くなくて、インディ・ロックのライヴにもっと頻繁に行くようなタイプのお客なんだよね。だから僕達がステージに上がっていつものようにプレイすると、最初はちょっとびっくりって人もいると思うけど、そうやって新しい客層に出会う機会こそ、僕達にとってはありがたいことだし。自分達の音楽をやるだけだし、ライヴもエンジョイしてる。だからOKなんだ。
――音楽的にあまり接点のないバンドとのツアーを難儀に感じることはない、と。
というか、そっちの方が僕は好きだな。
――その方がハードルが高くてやりがいがあるから?
うんうん。というのも・・・同じタイプのお客を相手にライヴをやってばかりだと、ちょっとこう、活気がなくなってくる気がするんだよね。だから、まったく違う環境でライヴをやるのはクールだよ。
――なるほど。でもロロ・トマーシの面白いところってそこでもあるんじゃないかと思います。ジャンルがないとも言える音楽だし、インディ雑誌「Plan B」とメタル~HR誌「Kerrang!」の両メディアにフィーチャーされるバンドって、あんまり多くないですよね。
確かにそうだよね。
――ほとんどもう、カテゴライズを無視しようとしてるっていうか。
うん、分かる。それがやれるバンドはあんまり多くないし、ほんと、僕達もそういう存在であることをとてもありがたく思っていて。なんというか、ジャンルを超越してるっていうのかな。おかげでバンドの視野も広がるし、より多くの人達に向けてライヴをやれるようにもなる。他のバンドには与えられないかもしれないチャンスを手にできてるようなものだからね、それって。たとえばイギリスのバンドで、ダウンロード・フェスティヴァル(メタラー御用達のフェス)とスーパーソニック・フェスティヴァル(前衛~ハードコアなアングラ系フェス)の両方に出演できる連中ってそんなに多くないと思うよ。
――(笑)確かに。で、あなた達の音楽に人々がショックを受けるのは、かなりアブノーマルな音楽ながら確実にフレッシュだからじゃないか、と。今のイギリスの人気トレンドにはことごとく背を向けた音楽だと思います。
うん、それは意識的にやってることで・・・自分達のやりたいことをやって、「こういうタイプ」と分類されないようにする、他のバンドと一緒くたにカテゴライズされないようにするっていうのかな・・・というのも、いったんそれをやり始めちゃったら僕達は安全圏に留まろうとするだろうし、それじゃあ面白くないよね?僕達自身にとってはもちろん、聴き手にしたってそうだよ。だからまあ、僕達ならではのことをやり続けて、オーディエンスにもそこに興味を抱き続けてくれたらいいな、と。ほんとそれだけだし、そうすることで自分達自身も活動を面白いと思えるようになる・・・っていうのも、自分でも楽しめなくちゃ続けていく意欲が湧かないからね。
――でも、たとえば「おなじみの曲が聴きたい」「ヒット曲を聴きたい」という大衆のニーズって大きいものですよね。長期的に見て、あなた達の「独自のユニークさ」を保つ姿勢、大衆に媚びない姿勢を貫くことは可能だと思いますか。
うーん・・・
――もちろんスーパー・ファーリー・アニマルズやレディオヘッドなど、音楽面で妥協することなく独自のファン・ベースを広げたっていう例外もあるわけですが。
なるほどね。でも、ファースト・アルバムを出したばかりっていう今の僕らの状況では、なんというか、最初の土台を固めている段階、人々に僕達が何をやろうとしているか知ってもらうって段階だと思うんだ。みんなに僕達を知ってもらって、気に入った人にはハマってもらって・・・そうやって、彼らも今後の僕達に何を期待できるか、どういうことをやってるバンドなのか分かるっていう。とは言っても、僕達の何もかもを明かしたいわけじゃないんだけどね。僕としては、EP(昨年リリースされた自主制作盤)を出した頃のロロ・トマーシと、ファースト・アルバムを作った今のロロ・トマーシはすごく違うバンドだと思いたい。僕達はどんどん音を変化させていきたいと思ってるし、前進していきたいよ。そうやって、自分達にとってもできる限り面白く興味深いものにしていきたいっていう。僕達がバンドをやってるのは、全員音楽好きで、音楽を作るのが好きだからであって。それは何よりも第一に来ないと。
――セレブなロック・バンドになるつもりは毛頭ない、と。
いやあ、ないな~~(苦笑)・・・まあ、それって僕にはあんま興味がない分野だな。だから、ツアーの本数をある程度維持できて作品をリリースし続けられれば、それで僕達はハッピーだよっていう。100人が相手でも1000人が相手でも、それは同じことっていう。
――デビュー・アルバムですが、去年トラック・フェスティヴァルであなた達をライヴで観て衝撃を受けた時の印象とはずいぶん違うものになったと思います。バンドとして成長・進化しているので当たり前ですけど、レコードではもっと音楽に「空間」を持たせようとしているなと感じたんですが。
うんうん!その点は・・・自分達でも意識してやったことなんだ。というのも、君が観た時に僕達がプレイしていたセットって、それこそあの1年ずーっと演奏し続けていたようなセットで。新曲を書こうとしてはいたんだけど、カレッジを終わらせなくちゃ、試験を受けなきゃ~とか色々他にやることがあったせいでしばらく行き詰っていたんだよね。だから、あのフェスに出た頃にアルバム向けの曲を書き始めたと言えるし、そこからの1年というもの、自分達がやりたいことは何なのか、どんな風に物事を変えていけばいいかって点をみんなでとことんディスカッションし合って。というのも、ちゃんと考えることなく、とにかくただ次のEPを書くってことは絶対にやりたくなかったし・・・要するに、「EP:その2」みたいなものを出す気は毛頭なかったっていう。というのも、そうやって最初のEPとあんまり変わらない作品をさくっと出しちゃう方が自分達にとってはずっと楽だったんだろうけど、自分自身に課題を与えたかったし、そうすることで自分達の限界を押し広げたかった。もちろん、僕達の好きな音楽、趣味もどんどん変化していっているし、常に新しい音楽を耳にしてそこから影響されてもいるしね。だから、このレコード(「Hysterics」)にはそうした影響がすべてドキュメントされているし、このアルバムは「2008年版ロロ・トマーシ」ってこと。だからって無理に変えようとしているわけじゃないけど、去年そうやって僕達が経てきた体験をこれからも続けていけば、次のアルバムを書いてレコーディングする段階になった時、僕達もおのずと変化しているだろう、と。
――ちなみに、あなた達が理想とするバンド、そのキャリアをリスペクトするヒーロー的存在のミュージシャン/バンドと言ったら誰になります?
まあ、メンバーそれぞれ違う答えを返すだろうけど・・・僕個人としては、アット・ザ・ドライヴ-インあたりになるかな。彼らは・・・リリースも多かったし、同時にすごく、ものすごーくハードにツアーしたバンドだったと思うんだ。DIYの草の根レベルのツアーを数多くこなすことを通じて、なんというか、最後のアルバムになったメジャー・レーベルからの「Relationship of Command」にまでビルド・アップしていったっていう。別に、彼らがメジャーにクロスオーバーしたって点がポイントじゃなくて、それよりも彼らの作り出した状況を言ってるんだけどね、要するに、あのものすごい・・・すごーくヘヴィで実験的な音楽でありながら、彼らは同時にとてもキャッチーでポップなエッジも備えた音楽を作っていたっていう。その一方で歌詞に目をやると、これまた対極的に分かりにくくてしっちゃかめっちゃかだったりして(笑)、なのに本当にキャッチーでエネルギッシュな曲を書いていた。あのレコードが彼らのピークだったと思うし、まあ僕は彼らを生で観ることは敵わなかったけど、彼らのキャリアと彼らがやったことを見上げてるっていうのかな。強烈な音楽をプレイするバンドだったわけで、まったくメインストリームな音楽じゃなかったし、そこで妥協することもなかった。なのに、彼らはああいう活動をやりおおせて、世界中をツアーして回ることもできたっていう。それって僕達のやっていることに希望を与えてくれるものだと僕は思うし・・・僕達のやってることは彼らよりもややアクセスしにくいものだとは思うけど、それと同時にああいうバンドがあそこまで成し遂げたってのは、僕達にとっては大きなインスピレーションなんだ。
――バンドが始まったのは05年だそうですが、当時はまだ15、16歳くらいだったわけですよね。
うん、最初のショウをプレイした時、バンドのうち3人は16歳。エヴァは14歳で、ギターのジョー(・ニコルソン)は15歳だった。
――それくらいの年齢だと、キッズの多くはコンピューター・ゲームだの友達と遊ぶことに夢中じゃないかと思います。音楽を始めたきっかけは?
んー、僕達みんな・・・なんというか、かなり子供の頃から音楽にハマっていてね。だからこのバンド(ロロ・トマーシ)も僕達にとっては最初のバンドじゃないんだよ。13歳の頃から同じバンドでプレイしてたし。僕達はシェフィールドの中でも街外れの、田舎の地域の出身で・・・
――それってバーンズリーですか?
いや、シェフィールドとバーンズリーの中間あたりに位置する、小さな村で暮らしてた。だからまあ、いちばん最寄りの大きな街といったらシェフィールドになるっていう。で・・・うん、そんな環境だから、あんまりやることもなかったな。そもそも音楽に向かったのだって、楽器を習っていたんだけど、そこで「演奏に慣れるのはバンドを組んで練習するのが一番だ」って言われて。そこでバンドを始めたんだけど、みんなすごく音楽にハマってしまってね。で、このバンドを始めることに決めた頃には僕の音楽の趣味もずいぶん変化していて、それは16の時で学校(高等教育)の最後の1年で・・・うん、だからこのバンドを始めたのは何より曲を書きたかったからだし、ライヴをやって、ツアーで外に出て行きたかったっていう。それまで、そんなこと経験したことなかったしね。
――ご両親はその決断にどう反応したんでしょう?あんまり親御さんが喜ぶ進路じゃないですよね。
うん、でも僕達の親はみんなずっと応援してきてくれたよ。子供の頃、僕にピアノのレッスンを受けさせたのも母だったし、ギターを弾き始めた時もがんばれって言ってくれたり。だから僕達がこのバンドを始めることにした時も、とても理解してくれたし支えてくれて。もちろん彼らだって、子供が教育を続けて学問を収めることの大事さは承知してるんだけど、その一方で学業以外の活動を追及するのもとても重要だって知ってるっていう。だから、うちの両親もバンドというアイデアには乗り気だったし、そこからもっと状況がシリアスになってフルタイムでやることになった時も、そこで「僕達がやりたいのはバンドだけだ」って点に彼らも気づいてくれたっていう。もちろんこのバンドをやるために大学進学はおあずけになったわけだけど、思うに僕達の両親も、大学はいつだって待てる、子供達が行きたいと思った時に行けるものだと理解してるんだろうね。でもこのバンドのチャンスは今追及するべきものだったし、自分達が置かれたこの状況を最大限に活かさなくちゃならないっていう。だから、僕達の選択とこのバンドを支持してくれるような両親に恵まれて、とても運が良かったと思う。
――近郊のシェフィールドと言えば、近年アークティック・モンキーズが大成功を収めて注目を浴びたエリアですよね。あなた達と音楽的な共通点はないにせよ、近隣・地元のバンドがナショナル・チャートのトップに立つという状況に鼓舞されたことはありました?
んー、ぶっちゃけそれは考えたことないなー。彼らは彼らだし・・・まあ、それは音楽的な面ではなくて、どうやってバンドをブレイクさせたか、あるいは成功を収めたかって意味だけどね。というのも、僕は特に成功って面には憧れは抱いていなくて、それよりもとにかくライヴをやりたい、ツアーをやりたいって方が大きいんだ。そのレベルには今やもう達したわけだけど、そういう小さなゴールを達成したらすぐに次なるゴールが見えてくるわけ。たとえば国外でもライヴをやりたいとか、フェスティヴァルに出演したい、とか。バンドを続けながら、そうやって自分達なりの目標をひとつずつ消していくことができているし、他者の成功と自分達を見較べながらだとか、他の連中の功績に追いついてやれ、なんて考えこむことなく、自分達の手でやりたいようにやれてることに今とても満足してる。
――バンドのスタート当初、音楽的にもっとも影響を受けたバンド/ミュージシャンと言ったら誰が挙がりますか?
コンヴァージとかThe Great Redneck Hope、The Red Chordあたりの、すごくヘヴィな音楽だね。あ、それとイギリスのバンドでThe Murder of Rosa Luxemburg、彼らには初期に大きな影響を受けた。
――一般的なポップよりヘヴィでダークなエッジのある音楽に惹かれたのはなぜだと思います?
んー、初めてああいうバンドの音楽を聴いた時・・・ものすごく興奮させられたんだよね。ああやって誰かが感情だの欲望といった思いをプレイするのに接して、僕の目も開かされたっていうか。だから、ああいう音楽を初めて聴いた時、パッションが聞こえてきたんだよ。レコードを何百枚と売ってやろうだとかバンドで儲けようだとか、そういった欲求とは一切関係ない場所からこの音楽は出てきたって、たちどころに分かるっていう。完全に他とは違ったし、僕はそこにすっかり夢中にさせられたね。あれはひとつのムーヴメントだったし・・・だから僕の入れ込んでるバンドが色々と違うことをやっていくようになっても、逆にそれをいいなと思うようになっていって。あの手の音楽にハマっていったのは、別に僕自身も「怒れる若者」だったとか、そういうわけじゃないんだ。純粋に、ああしたフィーリングはどこから生まれるのか、彼らがああいう音楽をやる動機は何なのか、そしてどんな風に新しいサウンドを作っているのか、そうしたことに対する心からの興味に基づくものだった。
――そういう音楽に惹かれたり、またロロ・トマーシのサウンドにしてもダークで非現実的なエッジがあるのは、あなた達が実際はノーマルである意味平坦な生活を送っていて、その裏返しとしてエクストリームなものを求めるから・・・という部分もあるのかなと思ったんですがいかがでしょう。
ああ、その点に関しては・・・自分達の生い立ちに感謝しないとね。僕達がこれまで経験してきたことは・・・すごく安全な環境の中で、すべてがちゃんとしていたから。まあ、だからって退屈だったとまでは言わないけど、ある意味活気に欠けていたし、「そこそこ」って感じだったのは確かだよ。だからそれもあって、ある意味もうひとつの別のエモーション、極端な喜びだったり強烈な悲しみだとかに惹きつけられるっていうのかな。で、ヘヴィ・ミュージックというのは概してそうしたエモーション、絶望的なまでの怒りだとか、そうしたものをドキュメントするものだっていう。うん、それって自分でも人間として強く感じたいものだし、それがどこから来るのか理解したいと思うものだよ。
――あなたと妹のエヴァが生まれ育った村はどんな場所ですか?
すごく気が滅入る場所だね。ストックスブリッジっていうんだけど、ドン詰まりの町っていうか、鉄鉱業でかつては栄えたけど、今の若い人間にはあんまりチャンスもなくて、みんな町を出て行くっていう・・・だからまあ、あんまりやる気を起こさせるような土地じゃないよね。
――バンドや音楽の情報はどんな風に得ていたんですか?やっぱりネットから?
そうだね。ネットもそうだけど、色んな人に話を聞くことで知識を広げたな。もっと若い時の僕はシェフィールドにしょっちゅうライヴを観に行っていたし、行くといつも同じ人達が集まってて。
――分かるなあ、それ(笑)。
そういう連中と仲良くなって、「今なに聴いてるの?」なんて情報を交換したり、ファンジンやネットの記事を読んだりって感じ。ネットを通じて他の人と話し合ったり彼らが聴いてる音楽を知ったり、ネット通販でレコード買ったりトレードし合ったり・・・とにかくすっかりのめり込んだし、僕はそういうことが大好きなんだよね。新しいバンドを発見したりライヴを観に行ったり、相当時間を費やしたよ。それもまあ、自分の生まれた場所と関係しているのかも。ここからできるだけ早く出るんだ、外に出て行かなくちゃ、みたいな思いを抱かせる場所だし、音楽がそのためのチャンスを与えてくれたっていう。
――その都会のバンドにはないハングリーさが、ロロ・トマーシのフレッシュなエネルギーの秘密かもしれません。
うん、その通りだと思うよ。
――EPからアルバムにかけての変遷についてお聞きしたいんですが、今回のアルバムにはジャズやフュージョン、更には・・・この形容はあなた自身はお嫌いかもしれませんが、プログレの影響もあるなと感じました。
いやいや、全然OKだよ。僕達プログレも好きだし!バンドのギタリストはジャズ、それとクラシック音楽にとても入れ込んでる。
――・・・若いのに珍しいね。
(苦笑)うん、だよね。でも・・・単純な話、今ジョーが興味を持ってる音楽はそこらへんってことで。彼は本当にハマってるし、そういう要素を僕達の音楽にもちきたらしつつ、彼はそこにもっと現代的なひねりを加えてるっていう。そうすることで、僕達のやってることにもフィットするようにしてるんだ。プログレにしてもそれは同じことで、僕達キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、イエスあたりはどれも好きだし、それを自分達の中にアレンジしてる。イエスの「危機」、僕はすごく好きだね。あれは素晴らしいアルバムだと思う。
――エヴァの歌唱法なんですが、彼女はずっとあのシャウト~スクリーモな歌い方だったんですか?
うん。
――初期はもっと「歌う」というのに近かった、なんてことは?
いや、それはないよ。始めた頃からシャウトに絶叫って感じだった。
――それは、バンドの出してる強烈な音に彼女自身が合わせようとしたから?
そうだね。
――曲を書く時はどんな風に?あなたがメインのメロディを持ち込むんですか?それとも、もっと民主的なプロセスでしょうか。
曲の多くは、ギターのジョーが書いているんだ。彼がリフをギターで書いたり、他のメンバーのパートを大まかに作ってきて・・・残りの部分は僕もかなり書くし、僕とジョーとでそれぞれ書いてきたものを持ち寄って、それをバンドで一緒になってアレンジしていく。その意味ではみんながそれぞれの意見を反映できるし、そうやって全員で音楽を組み立てていくっていう。
――今の時点では、スタジオでのレコーディング作業とライヴとどちらに重点を置いています?
僕はほんっとに、ライヴをやるのが好き。ライヴ・パフォーマンスってのは・・・まじに他の何とも代えがたいものだよ。それにレコーディングはライヴとはまったく異なるものだし、あれは自分達のやってることを記録するってものだけど、ライヴからは得るものが本当にもっともっとたくさんあるからね。僕達のバンドに関して言えるのは、レコードを聴いただけじゃたぶん理解できなかったり、あるいは掴みどころがなかったりするかもしれないけど、ライヴに来てくれればリスナーとしてまったく異なる経験をすることになるだろうっていう。すごく視覚的なバンドだし、僕達のエネルギーにしてもライヴを通じての方がより伝わりやすい。ステージの上で踊りまくるし、僕達自身とても楽しんでる。旅することで色んな人にも出会えるし、うん、ライヴ体験の方が、レコーディングをやるより遥かに満足させられるってのはあるね。
――ライヴとレコーディング音源とのギャップを、将来的に埋められると思います?ライヴのエネルギーやクレイジーさを盤に落とし込んでいくことはできそう?
うんうん、でもそれは常に目標としてあることで・・・ライヴのエネルギーを盤に移そうとするって意味で、ファースト・アルバムはこれまでで一番近いところまで行ったものじゃないかと思ってる。ライヴでの迫力・強烈さをレコードにもってのは、僕達がいつもやろうと努力していることだよ。だけど、それよりも・・・要するに、ライヴ・ショウをそのままレコードにするって話じゃないんだ。ふたつの経験はまったく別物だし、レコードを聴くのとショウを聴くのとでは違うフィーリングを得ることができる。だから僕は、バンドがそのふたつのレベルでそれぞれに機能できたらいいなと思っているんだ、なんというか、異なる体験なんだけど、CDを聴いて好きになってくれたらライヴにも足を運んでほしいし、ライヴではまた別の満足を得られるっていう。
――個人的にはライヴがバンドの基本だと思います。ライヴでは編集も修正も効かないわけで、演奏を極めていけばいずれレコーディングにもその結果が反映されるでしょうし。
うん。僕達がこのバンドを始めたのも、ライヴをやるためだったからね。ギグをやりたいからバンドを始めたし、それはこれからも僕達にとっての中心であるのは変わらない。
――ツアーの何がそんなに魅力的?
僕は旅して回って色んな場所に触れるのが本当に好きだし、新しい人々と出会えるのも楽しい。ほんと、エキサイティングなんだ。
――そうやって、敢えてカルチャー・ショックを感じたい?
というか、純粋に経験ってことじゃないかな・・・。
――成長の一端として?
うんうん、成長しながら様々なことを経験していくっていう。
――じゃあ・・・いわばあなたにとってバンドは学校みたいなもの?
そうだね(苦笑)。だから、ツアーってだけじゃなく、人生経験とも言えるかな。
――若くてフレキシブルなうちに、様々なものを吸収したい、と。
そうだね。だから、今のこの時期の僕達っていうのは・・・いちばん・・・ある意味新たな経験に対してもっとも影響を受けやすい時期だけど、そこで自分達のやりたいことを自分達で決めることにしたし。だから、バンドはある意味そのための手段っていう。
――そういう時期に、ツアーやロック・バンド暮らしに入ることに恐れは感じないの?ライヴは楽しいけれど、バンドのメンタリティには落とし穴もありますよね。
うん、でも・・・その怖さも含めてエキサイティングっていう。ってのも、何がどうなっていくか、僕達にも分からないわけだしさ。それにそんなに怖いとは僕は捉えてなくて・・・っていうのも、これが僕達の人生の終幕ってわけじゃないんだし、すごくエキサイティングで、かつ本当に本当に、心の底からやってて楽しいことだから。でもそれと同時に、自分達にはいつだってバンド以外に他にもやれることはあるんだって分かってる、っていう。
――楽しいけど、「ロックの悲劇」もたくさんあるでしょ?
うん(苦笑)、まあ、それは僕達としても避けたいところだね!
――ライヴを重視する姿勢というのは、たとえば音楽を聴くのはダウンロードで済ませてしまって実際にCDを買う人間が減って、その場でしか味わえないライヴの需要が高くなっている・・・という現状にも影響されているのでしょうか?
そうだよね、そういう傾向にライヴと音源との価値判断を影響されている人も中にはいると思う。だけど僕個人としてはダウンロードはほとんどしないし、コレクター気質だからCDを買ってるよ。「所有する」ってのが好きだし、ライヴに行っても会場でたとえばバンドのCDなり7インチを買うことで、何かをお持ち返りする、得たことになるよね。だから、それだけ音楽が好きだってことじゃないのかなあ?好きであればあるほどもっと欲しくなるっていう。まあ、ライヴは往々にしてそのエクストラな興奮をもたらしてくれるものだけど。
――でも、10代後半~20代前半のあなたの世代の多数派の音楽との接し方――音楽は二次的な娯楽で、さほど重要ではないという感覚――は、現実として無視できないですよね?
うんうん。それを知り合いの同世代の中で感じることもあるけど、ほんと、人によりけりだから。でも、言われた通りだと思う。多くの人間にとって、レコーディングされた音源はものすごくアクセスしやすいものになってしまったし、その簡便さのおかげで「使い捨て」な感覚も生まれてるっていう。それは・・・残念なことだよね。だから、僕としてはむしろ世の中はまた変化してきてるって考えたいんだよ。アルバムをアナログでリリースするバンドも最近は増えてきたし、アナログってのはほんと、他に代えられないものだからね。もしもバンドがデジタル・フォーマットではなくヴァイナルで直接作品をリリースしていったら、それを聴くにはアナログを買うしかなくなるし・・・うん、そういう先祖帰りの傾向はちょっとあるんじゃない?もちろんさっきも言ったように、「音楽は使い捨て」って考え方は間違いなく存在するけど、一方でその逆をいく人々――目に見えない形ではなくちゃんと作品を手にしたい、レコードを買うことで生まれる興奮を再び感じたいって人も増えていると思う。で、願わくはそういう志向がもっと主流になればいいな、と。っていうのも、それって大切なことだと思うし・・・たとえば僕自身を例にとっても、MP3をせっせと集めたって、LPを手に入れた時と同じような満足感は得られないからね!だからそういう理解がもっと多くの人に浸透すればいいなぁとは思うけど、今のこの時点ではどうなっていくか分からないよね。
――先日スティーヴ・アルビニに取材したんですが、彼はCDというフォーマットはMP3のおかげでもう完全に先が見えているけど、アナログに関しては心配ない、なぜならアナログを聴く行為とデジタル・ミュージックを聴く行為は完全に別物だし、今後も必ずアナログ派は存在するだろう、と言ってました。
そうだよね、そういう先駆者的な考え方を守っている人はいつだって存在するものだし、そういう人達が発言し続けてくれる限り、そのアイデアに誰かがハマるのには、そういう考え方を持つバンドの作品を1枚聴けばいいっていう。聴き手も影響されるし、それが次の世代にも伝わっていくわけで。
――ファースト・アルバムを出したばかりのところで答えにくい質問かもしれませんが、次の作品の方向性が見えていたら大まかでもいいので教えていただけますか?
僕達としては、前進していくって要素を維持していきたいんだ。長尺の、スケールの大きいリフのある曲とかをやっていけたらいいなと思ってる。ファースト・アルバムの曲でそのヒントになるものと言ったら、「Scabs」「Nine」「Fantasia」あたりになるかな?
――うん、あの後半の流れはすごくいいと思う。
それは僕ひとりの考えだけど、ああいうタイプの曲をもっと突っ込んでいけたらいいなとは思ってる。バンド全体として同じ考えかどうかは分からないけども、近いうちに話し合いをすることになるはずだよ。クリスマスの前にオフがあるから、そこで新曲に取り組むことになるだろうし、どういう音になるかが見えてくるんじゃないかな。
――分かりました。今日はどうもありがとう。

ロロ・トマーシ「Hysterics」を脱兎チェック!


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