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2009/11/12

WARP20--Tyondai Braxton

ワープ20周年スペシャル・インタヴューその①

いよいよ来週末に開催が迫ってきたエレクトラグライドpresentsWARP20。90年代エレクトロニカ~テクノの名門として一時代を築き、UKインディ・シーンに独自のポジションを開拓、近年はバトルス、マキシモ・パーク、グリズリー・ベアらアート・ロック勢のリリースでも高い評価を獲得しているワープだが、その最新地点&これからを目と耳で体感できるこのワールド・ワイドなビッグ・パーティーは、音楽ファンにとってスリリングなイベントになるに違いない。
そのエレグラで日本に乗りこんでくるワープ軍団の中でも、アヴァン/インディのクロスオーヴァー人気を誇る象徴的な存在がバトルス。シーンに衝撃を与えたブレイク作「Mirrored」に続く新作からの楽曲がいちはやく披露されるのでは?と期待値も高まっているし、ぶっちゃけ彼らの驚異的なライヴを観るだけでも、参加する価値は大いにあるだろう。今回は、そのバトルスの「顔」としておなじみ:タイヨンダイ・ブラクストンに電話で話を聞くことができた。今秋発表されたソロ最新作「Central Market」は、オーケストラと共演~クラシックと現代音楽の話法に彼ならではの個性的なメロディ・センスそしてダイナミクスを注入し、極めて野心的で斬新なサウンド・スケープを達成した優れた作品だった。そこに、デイヴ・ロングストレス(ダーティ・プロジェクターズ)やスフィアン・スティーヴンスらと同様、コンポーザーとしてのトータルな視点でモダン・ロックのコンテクストを押し広げ、新たな可能性を探る先鋭的なミュージシャンの瑞々しい知性、そして柔軟な感性が浮かび上がってくると思う。
含蓄に満ちたソロだけではなく、気になるバトルス新作の方向性についても聞く・・・つもりだったのだが、残念ながら時間切れになってしまった。しかし、文字であれこれ読むよりも実際に耳で聴くのがベストでしょう!ということで、彼らのネクスト・ステージを21日幕張メッセでぜひ目撃してほしい。なお、本サイトのWARPミニ特集として、来週レーベル・オーナーのスティーヴ・べケット最新インタヴューも登場するのでお楽しみに!

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――今日はお時間ありがとうございます。エレグラ含む、ワープ20周年の一連のアニバーサリー・ギグの準備で忙しいのではないか、と察しますが?
その通りなんだ!ちなみにこの取材、何分くらいかかるかな?
――3、40分もあれば。
オッケー!っていうのも、まさにそのためのリハがこれからあるから、取材時間を確認しておきたかったんだ。
――分かりました、なるべくスケジュールに支障がないようにします。
大丈夫だよ!(笑)
――まずはソロ新作「Central Market」について聞いていこうと思うんですが。あなたがストレートに「ロック」だったり「オルタナ」、「エレクトロニカ」な音楽人ではない・・・と承知してはいても、やはり聴いて驚かされたんですね。もっとバトルス的なサウンドを期待していたんですけど、この作品はクラシック音楽、更にはジャズと共通項が多くて。
うんうん。
――この、ある意味「あなたらしからぬ」作品はどんな風に始まったのでしょうか?もちろん、あなたはバトルス以外にも常に様々なマテリアルに取り組んでいると思うのですが。
そうだね・・・ソロは、実はこれまでも結構長いことやってきたんだよ。でも、その多くは大体ループが元になっている音楽でね。ギターを弾いて、自分でループを作ったりしていたわけ。で、今回はある意味そのループ・ベースの音楽を、もっと多くの人間による演奏を通じてシュミレートしようとした、というか。なんというか、すごく・・・凝った、要するにオーケストラ的なセッティングでやってみよう、と。で、それはまあ、自分ひとりでもシュミレートにトライしようとしていたことなんだけど、バトルスのこの間のレコードを作っていた時、僕は楽曲のアレンジにものすごくのめりこんでしまってね。みんなのパートを分割してみたり、色々と取り組んでみて。で、そのうち僕は・・・ふっと気がついたんだよね、自分は本当にこの音楽が気に入ってるし、だったら、そういういくつものパーツを模倣するのではなく、実際にこういう音楽をたくさんのプレイヤーのために書いてみたらどうだろう?と。それで(この作品を)やってみることにしたんだけど・・・とてもスリルに満ちた、エキサイティングな体験だったね。自分が今後これから向かうであろう、そういうサウンドになったな、と思っているよ。
――根本的なプロセスの違いに、困難を感じたことは?これまでソロあるいはバンドと音楽を作ってきたわけですが・・・結局、何人編成のオーケストラを使ったんですか?
14、15人じゃないかな。
――なるほど。もちろんスコアは書き下ろしたと思いますが、そうした大人数を相手にするのは、たとえばご自分のアイデアをコミュニケートするのが難しかった、なんてことは?
そうだね・・・でも、大変だったのは確かにその通りなんだけど、要するに、プロセスそのものにえらく時間がかかったんだよね。その点が、この作品の大変さだったんだ。というのも、何かアイデアを思いついたら、それをなんとか具体化させなくてはいけない・・・そのアイデアを、理解してもらえるよう、ミュージシャン達に提示しなくてはいけないわけだからね。で、そうしたアイデアにしたって、それを思いついた時点では(オーケストラという編成に)本当にフィットするものかはまだ分からないし、まず、スコアを起こしてみないといけないっていう。その上で、ミュージシャンを集めて、実際に演奏してもらって・・・とにかく通常よりずっと時間のかかるプロセスだったし、普段と較べてすぐには結果が分からない、そういうものだった。だから、そうだな、継続していくプロセスだった、というかな。それもあったし、スコアを書いて、オーケストレーションに関しても間違いがないか確認して・・・要するに、2、3人を相手にバンドでレコードを作るよりもっと緻密で骨の折れる、そういうプロセスだったのは間違いない。でも、僕にとってあの経験はとてもためになったんだ。ああいうやり方で作業してみるのはグレイトな経験だったし、その一方で、バンドとの作業もできるし、自分ひとりでも音楽を作れる・・・そうした様々な手法で音楽に取り組んでみるのって、ある意味自分自身にとっても刺激になるからね。自分の慣れ親しんだ安全圏から出ていって音楽を作る、そういう経験は僕自身にとってプラスになることなんだよ。
――・・・なんだかこう、難しい宿題をやってるようにも聞こえますね(笑)。
(苦笑)。
――そうやって確実に色々学んだにしても、時間はかかるし面倒だし、「もうわざわざ宿題なんかやらない!」なんて心境になることはなかったんですか。
うんうん(笑)。まあ、確かにもっと手の込んだ作品だし、その意味ではある種の宿題だったのかもしれないよね・・・でも、本当にとても・・・僕にとってはスリリングな体験だったし、やれることはいくらでも出てきて。ただ、僕はなんというかな、この作品をただ純粋に頭や知性だけで理解するタイプの作品――高尚すぎて、要するに人々が感情や本能/肉体的なレベルでコネクトしにくい、そういう内容に終始させたくはなかったね。というのも、結局の話・・・もちろん、様々なコンセプトであったり知的な内容が関ってくる、そういう類いの音楽ではあるんだけれども、僕にしてみたらやっぱり、結局のところは再生ボタンをプッシュしてもらって出てきた音を聴いて、「おっ、最高!」って風に反応してもらいたい、気に入ってもらいたい、そこだからさ。要するに、この音楽とエモーションの面でコネクトしてほしいし、そうだね、感動してもらいたいっていう。だから、うん、なんだかんだ言っても、僕にとって一番エキサイティングなところはそういう点なんだよ。
――同時に、この作品に参加した人々:ワードレス・ミュージック・オーケストラは主にクラシックをプレイしている音楽家達だと思いますが、彼らにとっても、あなたのオリジナル・コンポジションをプレイするのはかなり刺激的な経験なったんじゃないでしょうか?
うん、でも、彼らはすごくすんなり僕の音楽とコネクトしてくれてね・・・ある意味、この作品の音楽そのものはとても凝ったものなんだけど、参加してくれたミュージシャン達が本当に腕の立つ連中で・・・マジにすごーい人達だったんだよ!(笑)だから、彼らは即音楽を飲み込んでくれたし、僕の狙いもしっかり理解してくれた。たとえば、あるスコアの持つフィーリングであったり、あるいは僕がクリエイトしようとしているのはどういう音楽なのか、そこら辺を掴んでくれて。だから、僕のために、すごくクリアにスコアを翻訳してくれたっていうか。彼らみたいにグレイトなパフォーマー達と仕事ができて、本当に自分はラッキーだったな、と思うよ。
――なるほど。こうしてオケと共演したのは実質初めてだったと思いますが、あなたは世代的にパンクやヒップホップといった、「形式ばって難度が高い」とされるクラシック音楽に対するアンチテーゼのような音楽から始まったわけですよね。こうして彼らの演奏力の高さに触れてみて、感動した、というのはある意味皮肉かもしれません。
んー、でも実際の僕は、むしろそっちの畑から出てきた人間だからね。作曲法を学ぶ学校にも通ったし、その前からオーケストラ音楽やジャズ・ミュージック、実験音楽に囲まれて育ってきた。だから、ある意味そういうバックグラウンドの方がまずありき、だったんだよ。でも、10代、20代と成長するうち、さっきも言われたようなパンク、ヒップホップ、ロックなんかにハマっていって・・・というのも、そっちの方が直接性が高いし、即座にフィジカルな満足感をもたらしてくれる、そういう音楽だからね。で、そこから、その手の音楽から学んだこと――そうした音楽の独立性とでもいうかな、それを、自分がもともと慣れ親しみながら育った音楽へと還元したかったっていう。だから、そのふたつの世界のフュージョンを、この作品から聴きとってもらえれば嬉しいよね。要するに、ふたつの世界がお互いにギヴ&テイクしているっていう。
――ええ。それは間違いなく感じます。とても独特なフュージョンだと思ったし・・・そうだ、スフィアン・スティーヴンスの最新作「The Brookryn Queens Expressway」はもう聴かれました?
いや、まだ聴いてないんだ。いいの?
――素晴らしいです。あなたの作品ほどモダンとクラシカルの融合ではないかもしれないけど、あのアルバムを聴いて、「彼はもしかしたら00年代のガーシュウィンでは?」と感じたくらいで。
(笑)ワーオ!それはすごいね。でも、うん、彼はとても興味深い人だと僕も思うよ。
――もちろん、あなたの作品とスフィアンの作品の間で安易な比較を行うつもりはなくて・・・バックグラウンドも、音楽性も違いますしね。
うんうん。
――ただ、今のこの時代に、あなた達が共にクラシック音楽のコンポジションに向かった、というのがとても面白いなあ、と。というのも、バトルスやスフィアンを聴いてる若いインディ・キッズには「クラシックってダサい、退屈」ってイメージが強いと思うし。
(苦笑)なるほど。でも、不思議だよね、そうやって人々がクラシック音楽というものに対して抱いている連想――それは、ある意味僕にも理解できるんだよ。というのも、クラシック音楽というのは多くの意味で直接性を廃した音楽なわけで、冷静で怜悧、かつ美学的にも当たり障りのない、つまらないものだったりもするから。だから、クラシック音楽というのはまさに「古典的時で代遅れ、今日性に欠けたもの」って風に提示されているし、なんというかなぁ、昔のまんまの状態で保存されてる、そういうものになってしまってる。でも、それってクラシック音楽の捉え方としてはエキサイティングじゃなくて・・・っていうのも、クラシック音楽を実際に構成している様々な要素、それらは本当にスリリングな原理に基づいたものだからね。そうしたアイデアの多くは、それこそ好きなだけド派手にすることだって、逆に思い切りミニマルにすることも可能っていう。だから、クラシックのボキャブラリーというのは、多くの一般的なポップ・ミュージックに較べて、ずっと、ずっと幅が広いものなんだよ。ポップ・ミュージックというのは、語彙という観点から言えば、もっとずっとシンプルでミニマルなものだからね。だからこそ、多くの人間に受け入れられる音楽=ポピュラー・ミュージックになれるわけだけど、クラシック音楽を考えてみると、そのテクニックから何から、本当に・・・視界が広いもんだから、コンポーザーの側としては、そうしたクラシックの持つ言語のいくつかを取り上げて、それらを今まさに起きている、面白い音楽に当てはめてみる、その取り組みは、彼らにとってのひとつのゴールなんじゃないか、と。そういう、ふたつの異なる音楽のブレンドを生み出す中間地点を見つける、それは作曲家にとってはゴールのひとつだからね。
――なるほど。古いスタイルでも、聴き方次第でインスピレーションは受けるわけですしね。ただ、ネットのおかげで古今東西の音楽にアクセスできるようになったのに関らず、そうした水平思考ではなく、逆に多くの人間が「一番人気のあるもの」「ヒットしているもの」「トレンディなもの」に安易に流れていってる気もしますが?
んー、でも、年をとればそれも変わると思うな・・・なんでかというと、ちょっと年をとれば、自然に過去を軽く振り返るようになるものだからね。たとえば若い頃だったら、友達とクラブに繰り出して、とにかく踊りまくりたいだとか、あるいはサウンドのパルスだけブン!ブン!ブン!・・・と身体で感じられれば充分、みたいなものなわけ。で、もちろんそれはそれで全然OKなんだよ。そういう音楽だって喜びを与えてくれるし、僕だってそういう音楽は好きだしね。ただ、ある意味・・・そうだね、少しばかり年をとると、多くの人間が突如として無意識レベルで気付くっていうのかな、「ちょっと待てよ・・・少し時間を遡って、自分の今聴いている音楽のオリジンがどこにあるのか、そこをちょっと探求してみるか」みたくなるんだよ。で、そうしたクエスチョンの回答を探す方が、その人間にとってもっと興味深いものに思えてくる、という。でもまあ、結局のところは個々人のテイストなんだし、たとえば今40代の人間は80年代のポップ・ミュージックしか聴かないとか、そういうのは当然だし、仕方ないよ。僕達のジェネレーションにだって、同じことをやる人間はいるだろうしさ。でも・・・そうだね、それってある意味、インターネットの功罪なのかもしれない。さっきも言ってたように、あらゆる音楽に簡単にアクセスできることになって、それはもちろん素晴らしいことなんだけど、まあ、これは誰もが言ってる話だけども、同時に人々がアルバム1枚全曲をダウンロードすることがなくなって、曲、トラック単位で聴くようになった、という。ある意味、アルバムを1枚通して聴くだけの集中力を維持できなくなっているというか・・・それこそアルバムを聴く時のアテンション・スパンが、80%から20%くらいまで落ちてる、みたいな。でもね、それと同時に、インターネットのおかげで、ポピュラー・ミュージックにとって、今の時代というのは完全にフラットで平等なフィールドが開けているわけ。それは、一般的に言って必ずしもポピュラーじゃない音楽にとっても同じことで、あらゆる音楽へのアクセスが容易になったことで、そうしたアンダーグラウンドな音楽も苦労せずに聴けるようになった。だから、突如としてそういう状況が起こって・・・なんというか、まったく新しい、不思議な地勢が今僕達の前に広がっている、という。
――混乱でもありますよね?
うんうん、だけど、それそのものはクールだよ!
――ええ、わたしも楽しいですけど、こういう状況だとナビゲーションが必要というか、逆にどこから何を聴いていいやら分からない、みたいなことにもなりますよね?アクセスは増えたけど、そのぶんクズみたいな音楽に出くわすケースも増えるわけで。
うん。だけど、そういう状況って、恐らくネット到来の前からだって、形成されつつあったものなんだよ。ただ、今回が唯一違う点というのは、かつては、レコード・レーベルなりビッグな企業・・・MTVなり何なり、とにかくわんさか金を持っていた連中が、昔は音楽の発信メディアとして多大なポジションを占めていたわけだよね。金を持ってない限り、誰も自分の音楽を世に送り出すことができなかったっていう。でも、そうしたスーパー・スターの時代、アホみたいに巨大なスターの時代というのは、少なくとも今の段階では終わりを告げているっていう。要するに、かつては誰も、大衆の耳に届く「声」を持っていなかったわけじゃない?MTVとかでかいラジオ局なんかが、「あなた達聴き手が偶像視できるアイドルを12人我々が提供します。そこからお気に入りアクトを選ぼう!」みたいな。
――(苦笑)。
要するに、誰も新しいドアを開けることができなかったわけだけど、そういう時代は、もう完全に終わりを告げたんだよね。それってもう・・・それにまあ、あの頃ですら・・・っていうか、あの時期だから特にそうだったのかもしれないけど、「このアーティストは、あなたに与えられたスターの選択肢の中でも最高!これから数年間、あなたがスーパー・スターとして愛する人はこれですよ」みたいな調子で、激烈なプロモーションがかかって。で、やっぱり人々は、そういう派手な謳い文句には惹きつけられてしまうわけだよね。それってもう、本当に・・・聴き手が様々な音楽に触れる機会をもぎ取るというか、すごく限定されたものにしか触れられなくなってしまうっていうね。でも、僕達が現在接している問題というのは、ある意味その真逆であって、あまりに多くのものに触れられる/オプションが多すぎるから、じゃあ何を聴けばいい?ってことになってる、という。だけど、僕個人としては、ハナからオプションを限定されるよりは、今みたいに「なんでもあり」な状況の方が全然いいよ。

Platinum Rows--Tyondai Braxton

――わかりました。で、アルバムに話を戻しますが、この作品を聴いてもうひとつ驚いたのは、さっきあなたもおっしゃっていたように、もっと知的で小難しい・・・そういう前衛音楽めいたものを期待していたのに、この作品で何よりもっとも心に残ったのがメロディの美しさ・パワーだった、ということで。
ははは!
――キャッチーなメロディだ、とは言いませんけど、あなたの書くメロディには常に耳に残る強烈なフックがあるなあ、と。簡単には説明できないと思いますが、メロディはどんな風に書くのでしょうか。
んー、ギターで書く時もあればピアノで書くこともあるし、口すざむってこともあって・・・歌ってみて、その即興みたいなものを録音して、その上でアレンジしてみるってこともあるから、本当に「これ」っていうひとつの決まったやり方はないんだけど・・・うん、メロディとか、それにまつわるアイデアを具現化するのは、自分にとってはとても楽しいよ。僕は・・・うん、そうだな、すごく楽しいプロセスだけども、それを逐一説明するのは難しいっていう。
――この作品に聴きどころは多くて、アレンジもサウンドも聴き応えがありますが、一番心に残ったのはメロディの遊び心、あるいはユーモアだったので。で、それってバトルスでもそうだったよなあ、と。
ああ、それはクールだな・・・嬉しいよ。でもまあ、人それぞれの聴き方だから僕には何とも言えないけど、そう言ってもらえて嬉しいね。僕はメロディについては意識的だし。
――でも、多くの人があなたの作品はもっと複雑で分かりにくい、と期待している部分はありますよね?
ああ・・・言いたいことは分かるよ。要するに、メロディというのは、より複雑な音楽へと聴き手を誘う、そういう役割を果たすことが多いからね。もっと複雑で凝った動きのあるパートへと、メロディが引き寄せていく、という。ある意味印象的なメロディがとっかかりとしてあると、そのトータルな意味での音楽的な旅路を、よりエモーショナルなものにしてくれる、という。メロディに牽引されて、その音楽の持つ盛り上がりの瞬間に、もっとアクセスしやすくなるからね。
――うん、それは、このアルバムの持つ多彩なムーヴメントにも感じます。どうでしょう、この作品のための楽曲を書いている時って、バンドのために曲を書いている時とは完全に異なるマインドセットの中にいた、と言えます?
んー、すごく新しい経験ではあったよね。というのも・・・ああいうやり方で作業するのって、僕にはすごく大きな啓示で・・・唐突に、これって自分がやりたかったことだ!と感じもしたし・・・すごくエキサイトさせられたし、そうだね、すごくインスパイアされることにもなって、そのせいで、この手の音楽ももっと聴くようになって。おかげで、もっと様々な可能性が開けているんだってことも自覚するようになったよ。だから興奮させられもしたし、それでハッピーにも感じてたし、とても・・・うん、自分が取り組んでいる音楽に心からエキサイトできた。でも、今振り返ってみると、そうした音楽の多くが自然なものに聞こえるな、と。アイデアの多くは次々生まれていったし、たまにスペースを残してあげないといけないくらい、どんどん出てきて。だから、色んな事柄にエキサイトさせられていた、ということになるね。それってクールだけど、と同時に、こういう形で作品になったのは面白いなあ、とも思う(苦笑)。
――今後もソロ活動は続けられると思いますが、またチャンスがあったら、今回の作品の音楽的な方向性を更に追及していくでしょうか?あるいは、まったく違うことに取り組む?
あー・・・まあ、それを今話すのはちょっと時期尚早だけど、うん、今回やったことを踏まえて、その上でさらに積み重ねていきたい、その思いはある。ここから更に上のレベルへ、という。でも、そうだな・・・実は、もっとループがベースになっている音楽を、またやろうとしているところなんだよね。自分がこれまでやってきたことに再び回帰している、とも言えるけど・・・その手の音楽をエンジョイしている自分、その面を、もっと開発していきたいな、と。でも、もちろんバトルスの新作もあるわけで。うん、そうだね、だから、実際に作品が出来上がってみるまでは、どういうものになるのか、自分でも説明はできないってこと。ただ、アイデアは色々とあるっていう。
――「Central Market」はいわゆるヴォーカルのない、インストがメインな作品です。一般的なポップ・ミュージックだと、歌詞や声のトーンでエモーションを伝えるというのが一般的な手法なわけですが、あなたの音楽はソロにしろバトルスにしろ、ヴォーカルをメインにしてはいないですよね。なぜ、インスト、言葉のない音楽を作るのがあなたの性に合っているのでしょう?
いや、ヴォーカル付きの音楽に対して反感を持ってるとか、そういうことは別に一切ないんだよ。たとえば、バトルスの新作にしても、ヴォーカルをフィーチャーした「歌」がもっと含まれることになるだろう、僕はそう思ってるし。
――かなりプロセスされた声だし、いわゆる分かりやすい「歌」ではないですよね?
ああ、そういうのをやるってことはまずないだろうけど、ただ・・・どうなんだろうな?自分でも分からないけど、そうやって両方の強みを持てる、そこが好きなんだ。要するに、リリカルなヴォーカルがなくても曲を作れること・・・それってヴォーカルを楽器として使うってことだし、そこにはヒエラルキーが存在しない、というね。音楽は歌の下に位置する、二の次って言うのではなく、どちらもフラットな地平に存在している、という。でも、と同時に、よく書けた曲っていうのは素晴らしいものだし、僕だっていわゆる「歌」は好きなんだよ。そういう曲を書こう、とトライもしてきたしね。だから、うん、どっちかが正しい手法だ、僕が好きなアプローチはこっちだ、なんてことではなくて、自分としては、今の自分にとっては、ニュートラルなインスト・ミュージックの方がもっとエキサイトできる、それだけのことで。でも、だからってそういう自分の状態がこれからもずっと続く、とは思わないよ。たぶん、前進したと思えば後ろに下がる、という感じで、今後も変化していくんだろうし。
――他のアーティストのアプローチに関してはどう思います?ビョークなんかはヴォーカリゼイションの可能性を色々と探っていると思いますが、たとえばたくさんの人間の声をオーヴァーダブしてループさせるとか?
ああ。それは、自分でもぜひやりたいと思ってることなんだ。ほんと、次回は、できたら声楽隊のために曲を書ければな~、と思っていて・・・。
――おお、それは面白くなるでしょうし、ぜひやってください!
了解、やるよ!その作品の音源ができたら、君にも1枚送るね!
――(笑)ありがとうございます。
えーと・・・本当にごめん、すごーく言いにくいんだけど、マジにもうそろそろ出かけなくちゃいけないんだ。このままだとリハに間に合わなくなっちゃう。
――分かりました、では最後にという感じで、今度20周年記念パーティーにも出演されるわけですが、ワープに所属することの良さ~一番素晴らしい点は、あなたにとって何なのか、教えていただけますか?
うーん・・・彼らは本当にパワフルな地位を占めているからね・・・どうなんだろう、彼らと一緒に仕事できる面には、とにかく本当に山ほどグレイトな事柄があるから(笑)咄嗟に言いにくいんだけど。うん、まず単純に、仕事するのにとてもいい相手なんだ。レーベルで働いているスタッフの面々も、みんなすごく一生懸命働いてくれてるし、とてもいい奴ばっかりだし・・・そうだなあ、言葉で説明するのは難しいけど、あのレーベルの築いてきた遺産、そしてこれまでのヒストリー、それってすごく、彼らと仕事するのをスリリングな行為にしているんだよね。彼らは信用できる、そしてリスペクトできる相手だってことだし・・・本当に信頼できるし、彼らは僕をバックアップしてくれる、そういう感覚があるっていう。で、同時に彼らも僕達に頼っている、と。そこで、彼らは僕達の側に立っている味方だ、という感覚が生まれもして・・・たとえば彼らのこれまでの歴史を振り返ってみても、ワープというレーベルが、そのアーティストそれぞれを正しいやり方でリプリゼントしてきたのは明確なわけだよね?だから、あのレーベルにいると、保護されている、自分は安全な場所にいる、そういう感覚が生まれるっていう。彼らは強力なレーベルだし、だからこそ(そこに所属する)自分は自分のやりたいことを好きなようにやれる、そういう思いがあるっていう。
――ああ、それってアーティストにとっては一番大切な感覚ですよね。会計士とミーティングとかプロモーションの企画みたいなことは、あんまり考えたくないでしょうし(笑)。それより創作に専念したい、と。
そう。その意味で、とても、とてもサポートしてくれるレーベルだし・・・たとえば、「Central Market」をレーベルのヘッド、スティーヴに聞かせた時は、僕は正直なところナーヴァスだったんだよ。彼らはこういう音楽はあんまり出していないし・・・まあ、彼らがとてもオープン・マインドな人達だってことは承知していたけど、やっぱりビビってたんだよね、っていうのも、この作品の方向性というのが、果たしてワープの面々もエキサイトしてくれる方向性なのか?それは僕には分からなかったからさ。もちろん、彼(スティーヴ)が頭ごなしに(この作品に)「NO」って言うとか、そういうことじゃなかったけど・・・彼がどう受け止めるだろうか、そこは色々と僕も考えたんだ。でも、あの作品を聴いて、彼はすごくサポートしてくれて気に入ってくれたし、本当にオープンな感性の持ち主で・・・だから、そうやって自分の作品や新しいアイデアに対して心底エキサイトしてくれる人達と共に仕事ができる、それってすごくグレイトな感覚なんだよね。そして、向こうも予期しなかったような作品に対しても盛り上がってくれる、そういう人達。彼らは、たとえ意外なプロジェクトであっても、それに取り組むことを恐れちゃいない、という。うん、それがワープ・レーベルのキーなんじゃないかな。

バトルス公式サイト
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タイヨンダイ・ブラクストン「Central Market」を脱兎チェック!


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