Live

10/03/08|John Cale and Heritage Orchestra performing Paris1919
5March2010/Royal Festival Hall
10/02/20|Beach House
17Feb2010/Bush Hall
10/02/17|Tune-Yards
15Feb2010/Cargo
10/02/11|Vampire Weekend
5Feb2010/De La Warr Pavillion,Bexhill on Sea
10/02/05|The EX
03Feb2010/Tufnell Park The Dome
10/01/30|Midlake
28Jan2010/Tabernacle
09/12/17|Julian Casablancas
16Dec2009/The Forum
09/12/15|All Tomorrow's Parties 10th Anniversary
11-13Dec2009/Butlins,Minehead
09/12/15|Graham Coxon
28Nov2009/Barbican Centre
09/12/02|Patrick Wolf
15Nov2009/Palladium
09/11/25|Yo La Tengo
8Nov2009/Roundhouse
09/11/23|Grizzly Bear
31Oct2009/Barbican Centre
09/11/20|Nick Cave
25Oct2009/Palace Theatre
09/11/06|
4Nov2009/Rough Trade East
09/11/02|Cafe Oto
カフェ・オト2題
09/10/11|All Tomorrow's Parties New York
11/12/13September2009/Kutsher's Country Resort-Day3
09/10/09|All Tomorrow's Parties New York
11/12/13September2009/Kutsher's Country Resort-Day2
09/10/07|All Tomorrow's Parties New York
11/12/13September2009/Kutsher's Country Resort-Day1
09/09/24|Green Man Festival
グリーンマンのおまけ(写真のみ)
09/09/24|Green Man Festival
23Aug2009/Brecon Beacons,Wales Day3
09/09/22|Green Man Festival
22Aug2009/Brecon Beacons,Wales Day2
09/09/20|Green Man Festival
21Aug2009/Brecon Beacons,Wales Day1
09/09/10|Muse
4September2009/The Den
09/08/26|Fuji Rock Festival09
夏フェス・ラウンドアップ:第2弾
09/08/24|T in The Park--Appendix
Tイン・ザ・パーク・レポート特別付録:Tへの険しき道(?!)
09/08/21|T in The Park
10-12July2009/Balado,Scotland
09/08/12|Neil Young
27June2009/Hyde Park
09/08/04|Ornette Coleman's Meltdown Festival
20&21June2009/Royal Festival Hall
09/07/22|Here We Go Magic
07July2009/Madam Jo Jo's
09/07/13|The Horrors
05June2009/Electric Ballroom

2010/03/08

オープニング・アクトで登場したパトリック・ウルフ
御大!!

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの――という肩書きが、45年経った現在もついて回るジョン・ケイル。ヴェルヴェッツはオリジナル・アルバム2枚で脱退、以降のソロ・キャリアの方が圧倒的に長く、プロデューサーとしても活躍(ストゥージズ、パティ・スミス他)~音楽性はロックに留まらず、ノンVU作品(まあ、ニコのアルバムは除くとしても)がディスコグラフィの大半を占める・・・とはいえ、もっともわかりやすくアイコニックなキャッチ・フレーズという意味で、ヴェルヴェッツに勝るものはないのだろう。
そのヴェルヴェッツの「顔」「声」として認知され、ポップ・ヒットも達成。より広範な影響力を誇るルー・リード(ゴリラズ最新作にもゲスト参加したばかりだし)に較べると、そのキャリアはやや地味かもしれない。しかし、アイランド・レコード三部作(「Fear」「Slow Dazzle」「Helen of Troy」)に象徴される彼のユニークな70年代ソロ・ワークの中でも、もっとも愛され、カルトな信奉者を集め続けているのが1973年発表の「Paris 1919」だろう。テリー・ライリーらとのインスト~アヴァンギャルド期と、イーノ、ロキシー・ミュージックの面々らと制作したプログレ・ロックンロール期の狭間に生まれた歌もの作品、という意味では「Vintage Violence」も好きな作品だ。しかし、基本的にヘヴィ&マスキュリンなケイル音楽天体の中で、「Paris~」はいわば明け方にたまに見かける、白い月に似ている。リリカルで柔らかいバロック・ポップの燐光は、つかの間の儚さと得がたい美しさで異彩を放っている。

筆者にとっても、この作品は長らく「マイ・フェイヴァリット・レコーズ」の1枚として君臨してきた。しかし、極めてウェールズ的、かつヨーロピアンなこの作品に接するきっかけは、ニュージャージー経由でやってきた。ヨ・ラ・テンゴがこの作品収録の「Hanky Panky Nohow」をカヴァー、またフィーリーズのデイヴ・ウェッカーマンによるサイド・プロジェクト:ユン・ウーの傑作「Shore Leave」に「Paris~」が影響を残し・・・と、80年代ヴェルヴェッツ・チルドレンからの薫陶(あと、知人が作ってくれたミックス・テープに入っていた「Antarctica Starts Here」に衝撃を受けたのも大きかった)。そう考えれば、まがりなりにもヴェルヴェッツ・ファンであればチェックしてて当然!の作品だったんだろう・・・でも、ヴェルヴェッツ本体やニコ、ルー・リードのソロ作を優先しがちだったから仕方ない(>ミーハーな開き直り)。
ともあれ、聴いて仰天したくらい聴きやすくポップで、フィードバックも難解さも皆無。牧歌的な曲すらあって、「シスター・レイ」からは1万光年の彼方、である。なんだかんだいって、ジョン・ケイルの音源にはほぼどれもちゃんと聴くべき部分があるんだけど(「Fear」も大好きだし)、ポップ・アルバムとしての完成度/エヴァーグリーンな楽曲の良さという意味では、「Paris~」は別格だと思う。その、一種突然変異的な性質が興味深いのはもちろん、神話性を更に増しているのが、ロサンジェルス録音である点だろう。しかも、レコーディング・メンバーにはローウェル・ジョージ他リトル・フィートのメンバーが参加。ウェールズ、ディラン・トマス、フランス、アンダルシア、シェイクスピア、グレアム・グリーン・・・と、英欧=旧大陸モチーフ(アルバム・タイトル自体が1919年:ヴェルサイユ講和条約を指している)/ノスタルジックなデカダンの香り漂うこの作品が、アメリカの風土の中で制作されたってだけでも、不思議に弱いオタクな自分には尽きせぬアピールだったりする(プロデュースはピンク・フロイド、ロキシー他でおなじみ:クリス・トーマスなので、コテコテなアメリカン・サウンドになるはずもないが)。にしても、こういう大西洋両岸にまたがった~あるいは異邦人の視点が存在するレコード(スラップ・ハッピー「Acnalbasac Noom」、ルイス・フューレイ「Humors of・・・」、エリオット・マーフィー「Just A Story From America」、松任谷由実「時のないホテル」など)って、デカダンな夢想があって無性に好きだったりする。っていうか、ルー・リードの「Berlin」がそもそもそういうレコードだ。あれはロンドン・レコーディングだったから、「アメリカのウェールズ人」なジョン・ケイルとは逆方向=「イギリスのアメリカ人」なわけだけど、元同胞が同じ年に発表した2枚――サウンドに関しては「陰/陽」とパッキリ分かれるが――に、見えない糸が繋がっているようで面白い。

前置きが長くなったが、この「マイ大切なレコード」を、ジョン・ケイルがオケ付きで再演というのがこの晩の主旨。後で調べたら、既に昨年カーディフでこの企画は上演済み・・・とのことでUK初ではないけど、ATP的に言えば「Don‘t Look Back」なこのコンサート、アナウンスと同時に即チケット予約!と同時に、やっぱりこの作品が一番愛され、今も親しまれているのだなあ・・・と、ちょっとムズ痒い、しかし愉快な気分にもなった。マイナーだ、地味だとばかり思っていた自分の趣味が、実は案外多くの人に共有されていた、と発見した時の、あの感覚ですな。
今回嬉しいサプライズだったのが、オープニング・アクトにパトリック・ウルフが登板したこと(チケット発売時はアナウンスされてなかった)。プラチナ・ブロンド、ツイードとおぼしきニッカーボッカーのスーツ姿も相変らずラヴリーだったパトリックは、相棒ヴィクトリア(ヴァイオリン)を伴い、グランド・ピアノとウクレレ、(ジョン・ケイルに敬意を表して)ヴィオラを弾き分ける、というアコースティック・デュオ構成。「The Marble Index」他、ニコ作品への愛着が大きい人だけにこの前座起用は喜びもひとしおだったようで、曲間のMCでも「僕がこの楽器(ヴァイオリン)を手にするきっかけになったのがジョン・ケイルでした」「同じステージを踏む栄誉、本当に嬉しいです」と感動屋さんの面目躍如、なコメントにあたたかな拍手が湧き起こった(ジョン・ケイル当人が今67歳ってことで、しぜん年齢層の高いコンサート=オーディエンスの大半はパトリックが誰か知らなかったんじゃないかと思うけど、彼のボーイッシュな魅力はお母さんお父さん世代には即グッとくるものだったでしょうな)。メイン・コース前のアントレということで30分の短いセットだったけど、「Damaris」「Paris」など、この宵にふさわしい選曲と熱演はナイスでした。

幕間を挟み、ケイル御大のおでましである。まずは19人編成のヘリテッジ・オーケストラ(=クラシックに限らず、他ジャンルとの競演も多い)がぞろぞろ登場・着席し、拍手も引いてシーンと静まり返ったところに・・・なかなか本人とバンドが登場しないぞ!(笑)完全に出番のキューを外しているが、現代音楽とモダン・ロックの成立に無数の足跡を残し、見方次第では勲位くらい授かっていてもいい人(別に、本人は勲章を求めちゃいないだろうけど)だけに、コンサート・スタッフも何も言えないのだろうな~と思うと、ちょっと笑えた。ほどなくして、バンドに続きジョン・ケイル入場。タイなしのシャツ&スラウチな黒スーツのいでたちで、髪は例の赤白(赤毛のロング・ヘアに、前髪両サイドがプラチナ・ブロンドのメッシュ)。ジョン・ケイルに関しては、「髪型がヘン」という思いが常に付きまとってきたが(ヴェルヴェッツ時代のマッシュルーム・カットからソロ期の短すぎる前髪まで、常にインパクト強し。でも、いちばん似合ってないのは、90年代=ヴェルヴェッツ再結成時の横わけ+刈り上げな「良識ある中年」スタイルだよね~)、スパイス・ガールズのジェリ・ハリウェルが否応なく浮かんでくる今夜の髪も、期待を裏切らないエキセントリックさである。イェイ!
キーボードを前に御大が仁王立ちし、オケのコンダクターと目線を交わしてから、芳しい「Child S Christmas In Wales」がキック・オフ――とはいえ、作品発表から40年近く経った歳月は、やはり無視できなかった。「Paris~」を愛すべき作品にしている要因のひとつが、エモーション/感情移入から生まれる安易な甘さだの共感・過剰な泣きを廃した、しかし胸を淡々と射る歌声。しかし、音源で親しんできたそのフラット&憂き世離れしたテクスチャーは、現ジョン・ケイルの咽喉を通じ、枯れや深みを伴うものになっている。この手の「名盤再演ギグ」に付きものの、認識と現実のズレである。しかし、彼の個性的なヴォーカリゼイション・フレージングそのものは変わっていないので、割とすぐにアジャストできた。先にも書いたように、この人の声はそもそも非常に男性的なので、深みの増加は問題なし。高音=声帯そのものの若さが命の女性ヴォーカルよりも、その寿命は長いのかもしれない。
しかし、声よりも気になったのはPAのバランス。スライド・ギターがキモの曲とはいえ、エレキがデカすぎ&ソロのアレンジも相当変えてあって、どこかスカッとしない幕開けだ。うーむ・・・。だが、ストリングスとバンドとの音響バランスは2曲目で是正され、双方が本格的にハモり始めた「The Endless Plain of Fortune」は、生オーケストラならではのワイドでドラマチックな響きがみごとに決まった。繊細なキーボードのイントロから始まった「Andalucia」のポエジー、「Graham Greene」のおどけたノリも楽しかったが、チェンバー・ミュージック味がもっとも冴えたのは表題曲「Paris 1919」で、うららかなメロディとリズミカルなオーケストラ・アレンジの優雅さに我知らず涙がにじみ、「You Are a Ghost,La La La」のサビをつい合唱したくなってしまった(もちろん、静かな着席コンサートなんで必死に自制しましたが)。ジョン・ケイルのヴォーカルもこの曲の頃にはほぐれてきて、昔日の美を偲ばせている。しかしこの晩のハイライトは「Half Past France」で、ウェットに流れるギター・サウンドとパイプ・オルガンを思わせるキーボードが描き出す無限の海面を琥珀色に黄昏れたヴォーカルが曳航していく様に、心がすーっと静まり返っていくような安らぎを感じた。アルバム中もっともフラジャイルな美に満ちた「Antarctica」は、これまたデイヴ・ギルモア系の泣きに満ちたギター・ソロが活躍。パラノイアと錯乱がテーマの冷気漂う曲なので、若い頃のエッジや(ドラッグばりばりだった)狂気を無理に再現しようとするよりも、この処理は正解だったと思う。アルバムの曲順通りではなく、ラストに「Macbeth」の爆裂ロックンロールを持ってきて派手に締め括ったのも、その印象を強めた。

Paris1919—John Cale

「Paris」編に続き、ブレイクを挟んで第2部、まずはバンドのみをバックに「Vintage~」収録の「Amsterdam」。ミニマルなフォーク調ながら、リズムはエスニックな味を施してあってかっこいい仕上がりだ。続いて、あっ!このイントロのコードは・・・と思いきや、「Femme Fatale」。オーディエンスの反応・歓声は半端じゃなかったとはいえ、ロボティックなビートとシンセの分厚い音で再解釈されたこのヴァージョンは、ぶっちゃけ自分としては嬉しくなかった(こればっかりは、オリジナルに勝るものなし)。
しかし、おなじみ「Heartbreak Hotel」のカヴァーではダークな廃墟を思わせる不協和音・アグレッシヴなノイズがのたうち、やっぱりどんなに歳をとってもジョン・ケイルはジョン・ケイル、と安心させられる。続く「Fear Is A Man's Best Friend」も実にパワフルで、若いバンドを受け止め投げ返す勢いだ。この後オーケストラがステージに再び加わり、バロック調の美しい掌編に続き、ヴァイオリン隊のみをバックに「Hedda Gabler」でしっとり聴かせた・・・が、オーラスはやっぱり!「Dirty Ass Rockn’Roll」で、ここぞとばかりにサウンド全開のプレイヤー達を従えての大レヴュー的な盛り上げフィナーレと相成った。

50年代風ロックンロールからバロック・ポップ、そして前衛まで、70年代ジョン・ケイルの足跡をざっくり辿るごときセット――不発な曲もあったとはいえ、振れ幅の広さとそれぞれのジャンルのマスターぶりを再確認できただけでもオーライだったし、今のジョン・ケイル自身が、その様々な足跡のどれに対しても、特に強い思い入れがなさそう~サバサバしていたのも、現役っぽくて良かった。そして、やっぱり「Paris 1919」は優れたレコードだった。ちなみに、「Paris~」は2006年にライノから素晴らしいボーナス・トラック付きでリマスター再発されているので、未聴の方はぜひこちらから。あと、この晩会場で見かけたミュージシャンはジェームス・ディーン・ブラッドフィールド(さすがウェールズ同盟)、そしてダレン・へイマン。この人はサウスバンク・センター(会場:ロイヤル・フェスティヴァル・ホールを含む複合芸術施設)でのギグでよく遭遇するけど、たぶん会員なんだろう。今年のメルトダウンはリチャード・トンプソンがキュレーターだし、自分も年会費払って、メンバー会員(=優先予約可能)になろうかな。

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ジョン・ケイルを脱兎チェック!


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