イングランドがグラストンベリーなら、スコットランドの夏フェスはT in the Park!せっかくグラスゴーに住んでいるのだから逃すわけにはいかない!ということで、今年16回目を迎えるT in the Parkに行って参りました。Tと言えば、ギターロックを中心とした豪華ラインナップが最大の売り。今年もその評判通り、ヘッドライナーにはキングス・オブ・レオン、キラーズ、スノウ・パトロール、そしてブラー(スノパトとブラーは3日目のトリをシェア)を堂々ブッキング。加えて、お父さん世代大喜びのスペシャルズ、ペット・ショップ・ボーイズから、フローレンス・アンド・マシーンやレディ・ガガといった話題の新人勢、さらに新旧の地元のヒーロー・フランツ・フェルディナンドとグラスベガスまで、とにかく見逃せないバンドがてんこ盛りなのです!その上、今年は幸運にも期間中カラッとした晴天が続き、燦々と降り注ぐ太陽と冷えたビール(と言いつつ、お酒に弱い筆者はサイダー派)をエンジョイするのに最高なお天気でした(夜はジャケットを着込んでも寒いけど)。
そんなお天気に誘われてか、グラスゴーから会場に向かうバスの中では、早速酒盛りを始める陽気なスコッツ。そんな彼らのせいで、トイレが我慢できないと言い出した野郎共のためにバスが止まったりしたが(おいおい)、それもまぁ、スコットランドなら想定内。しかし、増え続ける一方の観客の飲酒量に反比例して劣悪になっていく会場の衛生環境&セキュリティといい、イギリスではお馴染みの“適当な運営”っぷりといい、「そんなことには慣れっこ」と思っていた筆者ですら、キツいと感じた場面が多々ありました。中には、冗談のようで冗談じゃない話も。それは後でお話することにして、まずはT太鼓判のアクトの中から、特に素晴らしかったバンドのハイライトをピックアップします。
Day-1
おにぎりを頬張りつつバスに揺られること2時間半、お昼過ぎには会場着。キャンプサイトの最奥でコツコツとテントを建てていると、遠くの方で「イェー!」という雄叫びが。と、次の瞬間から、スタジアム席に起こるウェーブのように、キャンパーたちの叫ぶ「イェー!」が近づいてきて、地響きのような大音量の「イェェェェー!!!」がもの凄い勢いで筆者のテントを通過。「ひえぇー、みんな気合い入ってるなぁ・・・」と度肝を抜かされたが、これが開場するまでずーっと続いていた。サッカー場か、ここは。
初日の金曜日は、夕方6時開演。出演者も少なく、「前夜祭」といったところだろうか。結局筆者がまともに見たのも、1バンドだけだった。
●フランツ・フェルディナンド
初日のお目当ては、何と言ってもフランツ!商業面でも人気面でもやや落ち気味だからか(涙)、地元スコットランドとは言え、メイン・ステージのトリ前という出演順に。しかし、蓋を開けてみれば、ヘッドライナーかと勘違いしそうな程集まった人・人・人!さすが、地元から愛されているフランツ!
ライブは、ド頭から「Do You Want To」「This Fire」の2連発。リーゼント風にトップの髪の毛をふんわり立てたアレックスは、その攻撃的な容姿とは対照的に至ってメロウで、ハンドマイクで歌うとまるでムード歌謡歌手のよう。その傾向は、前作の頃にも見られたが、今はさらに妖艶で、グッと甘く、そしてメンバーも自負するようにとってもダークだ。それは「Can’t Stop Feeling」や「Ulysses」といった新曲だけでなく、「The Dark of Matinee」「Take Me Out」といった初期の代表曲からも感じられた。今のフランツは、過去最高にセクシーと言っていい。しかし、今回の見せ場は、何と言っても最終曲「Lucid Dreams」後のジャムセッションだろう。アレックスとニックがシンセサイザーとミキサー卓に張り付き、重量感たっぷりのグルーヴに、エレクトロ・サウンドをこれでもかと飾り付けていく。ひげを伸ばしていきなりダンディ度を上げたポール(それまでのもさい頭はどうしたの、ポール!?)の、絡みつくようなドラムがまた色っぽいのなんの!新作リリース直後単独公演では、まさに過渡期の真っ直中で、次なる道を模索していたように見えた彼ら。そんなフランツが選んだのが、それまで常にロックとダンス・ミュージックの中間を指してきたメーター針を、一気にダンス・ミュージックへと振り切ること。このまま次のアルバムまで突っ走るのか、またもう一枚皮を脱ぐのかは分からないが、Tで見せたフランツの決断、筆者は両手を挙げて支持!
Day-2
2日目は、お天気も良ければ気温も高く、最高のビール日和!(もちろん、筆者はサイダーで乾杯)この日はホラーズからスタートしようと、早めにステージ前に待機していたのだが、機材チェンジ中のステージに下りてきたのは、何と別のバンドのバックドロップ(=ホラーズ、キャンセル確定)。もちろん、ホラーズのキャンセルもタイムテーブル変更も一切告知なし。ここは軽く流して、2日目再スタートである。
●ホワイト・ライズ
デビューから1年足らずだというのに、2番目に大きいNME/Radioステージを満員にしてしまった、UKロック期待の星ホワイト・ライズ。「Farewell to the Fairground」「To Lose My Life」とのっけからシングル2連発で、早速大合唱の嵐!真っ昼間+青空と、彼らのダークなサウンドとは正反対のシチュエーションだが、灼熱の太陽光と、ナイフの様に冷たく鋭いサウンドが、恐ろしいほどドンピシャ。テレキャスターの乾いた音が、空高く突き抜けていくのが見える。「熱/冷」の対比が、まさにホワイト・ライズなのだろうと思わず納得。いつものようにグレーのスーツに身を包み、笑顔を見せることもなく、淡々と曲を繰り出すクールな姿もとにかく様になる。個人的にイケメンとご贔屓のボーカル・ハリーも相変わらず真摯でかっこいいし(ジミー大西に似ているという噂もあるが・・・)、最後の「Death」まで、余すことなくホワイト・ライズ・ワールドを堪能できた。
●スペシャルズ
2日目、メイン・ステージに最も大観衆を集めたバンドの1つが、昨年27年ぶりに復活したスペシャルズ。テリーも参加しての再結成とあり、この日を待ちわびていたファンの喜びも一塩。スペシャルズTシャツを着た隣のお兄さん(35歳くらい?)も、曲が終わる度にいちいち「最高~!」と感慨深げだ。ステージには、パープル、赤茶、グレーとカラフルなスーツで決めたルード・ボーイ達が勢揃い。27年ぶりとは思えないパワフルなパフォーマンスで、「Too Much Too Young」「Monkey Man」「A Message To You Rudy」と、観客に休む暇を与えない。しかし、2週間前のグラストンベリーで見た時も不思議だったのだが、「Little Bitch」で「ワン・ツーッ!」と叫ぶ人が誰もいない。誰もいないから、自分の「ワン・ツーッ!」という甲高い声が辺りに響いてかなり恥ずかしい。「合唱好きなスコッツなら歌ってくれるだろう」と思っていたが、合唱の声の小ささでこの日1、2位を争えそうなくらい、「Little Bitch」になると誰も歌わない。これが日英の違いか、と思った瞬間。勉強になりました。
●ナイン・インチ・ネイルズ
2日目の最後は、迷わずナイン・インチ・ネイルズをチョイス。彼らのライブを見られるのも今年が最後!と、気合いを入れてNME/Radioステージへ向かう。・・・が、予想はしていたが、文字通りガラガラである(個人的印象だが、スコティッシュたちはハイソでこじゃれたバンドと、ストレートに感情表現する熱いバンドが苦手。NINは、まさに後者で、T向けではなかったと思う)。集まったのは2,000人位だろうか。PAの前ですらまだ余裕がある。裏(メインステージ)のキラーズ(≒国民的アイドル)に完全にお客さんをとられてしまった状態だ。しかし、観客数が少ないと言うことは、熱心なファンばかり集結しているということ。凍えそうに寒いスコットランドの夜に、真っ白な湯気を上げながらモッシュをしている若いキッズたちの笑顔が輝いて見える。NINとしての最後のツアーということもあってか、集大成的な意味合いも強かったこの日のライブ。音圧、一体感、音の密度、逞しさ、繊細さ・・・もう何をとっても完璧だった。ムキムキに鍛え上げられたトレント・レズナーの体からは、湯気と一緒に、ブラックホール級に黒々したオーラが立ち上っている。これぞトレント様。個人的フェイバリットの「Burn」と「The Hand That Feeds」の破壊力に度肝を抜かれつつ、アンコール「Hurt」では隠すことなく自分の脆さをサラッと見せてしまうトレント様に完全にノックアウト。もう言うことはありません。でも、叶うならもう1度NINのライブを見たいです、トレント様!
Day-3
会場が広いわけでもなく(むしろ、8万5千人収容なのにフジより明らかに狭い)、上り下りが激しいわけでもない(むしろ、公園なので平ら)のだが、前夜のNINに気を吸い取られたのか、すっかり疲労困憊。スコットランドの伝統音楽とダンスが楽しめるケリー・テントにフラッと立ち寄ってみたり、メイン・ステージの遥か遠くからThe Scriptを眺めたり(音源ではピンと来なかったが、ライブは上手くてビックリ!楽しかった~)、のんびり過ごすことに。
3日目はメイン・ステージがまるまるUKロック・デイ。ブロック・パーティからエルボー、スノウ・パトロール、そしてブラーと、UKロック好きにはたまらないラインナップだった(特に、今日本ではなかなかお目にかかれない後者3バンド)。筆者はエルボーからメイン・ステージに張り付き、弦楽器隊をしたがえての安定感あるステージを満喫。その後、予定では、スノパトで大合唱を楽しんだ後ブラーに雪崩れ込むはずだった。が、トンデモなハプニングのせいで、拳を上げて大合唱!なんて気分ではなくなってしまった。最初に動きがあったのは、スノパトの開演時間頃。主催者からアナウンスがあり、ブラーのメンバーの誰かが体調を崩したことを受け、回復の時間を与えるためにスノパトの開演時間を30分遅らせるとのこと。もちろん大ブーイングである。この時は、まだメンバーの誰がどんな病状なのかは明かされておらず、筆者の頭の中は「デーモンが神経性の疲労とか?それとも、久々の大舞台続きでデイブの体力切れ?(農夫・アレックスが病気ってことはないだろうな・・・)」と、どうでもいい妄想で一杯。その30分後、今度は主催者が直々にステージに登場。この時点でようやく、体調を崩したのがグレアムであり、現在も病院で治療中であることが告げられた。最悪キャンセルというシナリオも暗に意味しており、ファンも冷や冷やである。もちろんこの時は、まさか牡蠣による食あたりだなんて(そしてご丁寧にTwitterで「牡蠣とサバ最高!」と報告してくれていたなんて)、誰ひとり予想していなかっただろうけど・・・。
●ブラー
と、こんなドタバタの中、1時間半遅れとは言え、無事にブラーの再結成ツアー最後のライブは決行される運びになった。気性の荒いスコティッシュたちのこと、これでキャンセルになったら暴動にでもなるんじゃないかとハラハラしていただけに、無事に4人が出てきてくれたときはホッと一安心。当のグレアムは、黒っぽい無地のスウェットにグレーのパンツと、その格好からしてまさに病み上がり。しかし、ライブの後半にもなれば、ギターを掻きむしり、ハイジャンプをかまし、ストラップがとれてもギターをぶんぶん振り回し・・・と、ほんの数時間前まで病院にいたとは思えないほどの弾けっぷり。そして笑顔。これぞまさにプロ魂。このハプニングのために演奏時間は1時間20分に大幅に短縮されたが、ハプニングがあったからこそ、良い意味で力の抜けたライブになったとも言えるかもしれない。筆者はグラストンベリー、ハイド・パーク、そしてTとブラー再結成ライブを3度見たが、ツアー最後ということもあってか、Tでの4人には明らかに余裕があった。デーモンがグレアムを抱きしめたり、アレックスとグレアムが向き合ってプレイしたり、「今日は4人での時間を楽しむ以外の何もしない!」とでも言いたげな、ポジティブ度100%のオーラがキラキラ輝いていた。前2公演とは違った意味で、最高のライブ。「ブリットポップは“イングリッシュネス”を押し出したムーブメントで、スコットランドではたいして盛り上がってなかった」と、スコティッシュの友達から聞いたことがあるが、実際どうだろう。「これが青春!」とでも言いたげなおじさんたちも、明らかにリアルタイムでブラーを体験していないティーンネイジャーも、1曲1曲割れんばかりの大合唱。スコッツが本当にアガってる時しか起こらない"Here we, here we, here we fucking go"コールからの「Song 2」は殊更、バンドとファンが一体になったかのようなシンクロ具合。それを見たデーモンも、興奮した面持ちで「今までやってきた(「Song 2」の)中で最高の出来だよ!」と満面の笑みを見せてくれた(金歯もキラキラ)。
ファンやメディアの間では、ライブの冒頭にデーモンが「今日が最後のライブだ」と言ったことが波紋を呼んでいるようだが(「ブラーとして最後?それとも今夏最後?」という意味で)、筆者には、単に「この夏の再結成ツアー最後のライブ」と言っているように聞こえた。4人でバンドをやること自体がとにかく楽しかった頃に戻ったメンバーたちのこと。たとえ新しい動きが今すぐ起こらないとしても、今の彼らは、いつでもブラーに戻って来られるという信頼感と安心感に満ちている。これこそが、今夏の再結成ツアーがメンバーにもたらした、最大のものだったのではないかと思う。もう心配はいらないだろう。少なくとも、T in the Parkのブラーが見せてくれた4人の絆は、筆者に安堵感をもたらしてくれるものであったと強調しておきたい。でも、個人的には、「いつか」と言わず、早く戻ってきて欲しいなぁ・・・。
ブラーのメンバーがステージを去るのと入れ違うように、伝統衣装であるタータンチェックのキルトを来たバクパイプ吹きが登場。観客が掲げるいくつものスコットランド国旗が揺れる中、彼の独奏に合わせた観客の大合唱が、少し肌寒いスコットランドの夜に木霊していた(なんの曲かは分からなかったが、伝統歌か何かだと思う)。土地柄を全面に出したこうゆう演出は、素直に良いなぁと思う。最後は盛大な花火で、3日間に渡ったT in the Parkは幕を閉じましたとさ。
●写真&文=Ayano Onodera
| M | T | W | T | F | S | S |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 01 | 02 | |||||
| 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 |
| 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
| 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
| 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
| 31 | ||||||